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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

定期誌『MarkeZine』特集

定額制&データドリブンで「運任せ」な飲食業界を変える

飲食業界でサブスクリプションを導入した理由

――飲食店でサブスクリプションモデルを採用しようと考えたきっかけはなんだったのでしょうか。

 まず飲食業界のビジネスモデルが抱える課題をお話しさせてください。飲食業界のビジネスは、乱暴な言い方をすれば、「作った料理を、たまたま来ていただいた方に提供し、料金をいただく」という形です。実際、自身の行動を振り返ってみても、「今日のお昼は何を食べようか」「この近くで、何か良さそうなお店はないか」など、場所や気分でかなり適当にお店を決めるケースがほとんどです。偶発性が高いということですね。

 さらに、利益を得るキャッシュポイントも1つしかないことが飲食業界のビジネスモデルの脆弱さの要因になっています。また、デジタルマーケティングの世界では当たり前になっている顧客管理、アナリティクスが機能していない。そもそもデータが貯まる構造もない。

 それらを解決する仕組みがサブスクリプションモデルでした。とはいえ、新しい取り組みですので業態ごとに成功法則を導き出しているところです。

――業態ごとにサブスクリプションモデルでも別の形を取っているのは、どのようなやり方が最適かを検証しているわけですね。

 そのとおりです。収益性を確保するためのビジネスモデル作り、そして偶発性に頼るのではなく、しっかりしたマーケティング戦略を企画・実施する仕組みのあり方を考え、29ONとcoffee mafiaでは異なるやり方を展開しています。

飲食店が主体性を持てることが強み

――29ONとcoffee mafia、異なる業態それぞれの狙いとメリットについてお教えください。

 29ONは、固定の年会費という収益ベースの上に、来店時の食事代が加わる仕組みになっています。つまり年間の収益をベースとして確保しているので、メニューの原価率を高くしても健全な経営を続けることができるわけです。さらに、完全予約制にすることで、食材の廃棄率もわずかで済むという利点もあります。

 また、会員制にすることで、すべてのお客様の来店回数や頻度がデータベースで管理でき、個別のマーケティングアプローチを展開することができます。いわば、単品通販のマーケティングに近いイメージです。たとえば、来店頻度に応じたメールやDMをお届けするといったことが可能になります。それ自体はベタな施策ですが、飲食業界ではそれすらも実現するのは難しかったのです。

――coffee mafiaのほうは?

 定額制にすることで、継続的に来店してもらえる、つまりリテンションが高くなるという効果があります。月額費は2,000円なので、1杯200円のハンドドリップコーヒーで元を取るには10回以上の来店が必要になります。そういう意識もあってか、会員の方の平均来店回数は月19回前後といったところです。

――coffee mafiaのモデルでは、来店回数が増えると利益が減ってしまいませんか?

 ランチやオプションメニューをお勧めし、クロスセルにつなげるようにしています。来店頻度を高めていければそれだけクロスセルのチャンスも増えるということになります。

 そもそも、定額制というのは来店データを可視化するためのきっかけ作りでもあります。クロスセルのタイミングや頻度、内容を細かく取れるようになれば、データを基に改善をしていけるようになります。

 デジタルマーケティングの世界では標準的なことですら、飲食店では最先端なのです。

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これからは飲食業界もデータドリブンで

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

市川 明徳(編集部)(イチカワ アキノリ)

MarkeZine編集部 副編集長
大学卒業後、編集プロダクションに入社。漫画を活用した広告・書籍のクリエイティブ統括、シナリオライティングにあたり、漫画技術書のベスト&ロングセラーを多数手がける。2015年、翔泳社に入社。MarkeZine編集部に所属。漫画記事や独自取材記事など幅広いアウトプットを行っている。
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※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:39 https://markezine.jp/article/detail/27911

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