バナーよりLP的なクリエイティブのほうがハマる?
野口:気になったデータとして、今回DMを送付したうち約2.5%が「宛先不明」で返送されてきているんです。サイト上で資料請求をされた、資料の発送を希望していたユーザーにもかかわらずこの数字というのは、かなり高いと思います。すでに物件を見つけて転居済みだったのかもしれません。「LIFULL HOME’S」としては、住まい探しを支援するという役割を達成できているということになりますので、逆に嬉しいことなのですが(笑)
鈴木:やはり、DM送付時には物件の契約や購入を検討する状況ではなかったユーザーがかなりの割合にのぼったことが考えられますね。通常はオプトアウトのユーザーをオプトインへと導くためにDMやメールなどでのアプローチを考えるわけですが、今回は住所を入力したオプトインのユーザーが対象だったわけですから、「宛先不明」になるのは転居が疑われます。
野口:これはオファー面での反省点になるんですが、今回の実証実験ではKPIを「ほかの物件への問い合わせ」と「『住まいの窓口』への来店」の2つにしてしまいました。
さらに、クリエイティブ面では、今回のDMは、住んでいるエリアにおけるおすすめの分譲マンションもしくは一戸建てを3つ掲載するという内容でした。前回施策のDMでは一つの物件を美しいビジュアルで提案しています。
たとえて言えば、前回施策はLP(ランディングページ)的クリエイティブで、今回のDMはデータフィード型のバナー広告的クリエイティブでした。LP的なクリエイティブのほうがDMにはハマるのかもしれません。
鈴木:同感ですね。KPIは1つにしぼったほうが明快ですし、DMの内容についても物件の紹介は1つにしてリッチな表現にすべきだったかもしれません。実験の都合上、KPIの計測ポイントを増やしたくて、そのような構成にしてしまったのは申し訳ないです(笑)
また、前回も話題になりましたが、すでに新しい住まいへ移ってしまったユーザーに対しては物件の案内ではなくて家財道具やよりよい住まい方に関する情報の提供といった内容も検討したほうがよさそうですね。
分譲マンションや一戸建ての契約や購入を検討して資料請求までのアクションをしたユーザーですから、次のライフステージを迎えて新しいライフスタイルに関する「提案」を求めていることも考えられます。
野口:当社としてはLIFULL HOME’Sの豊富なデータを活かして不動産分野にとどまらないソリューション作りを模索しています。物件への問い合わせや店舗への来店アップだけでなく、引越し後の生活に必要なモノやサービスを販売する企業様を広告主として想定したDM広告商品を開発していきたいですね。
デジタル・アナログ問わずユーザーの行動データを蓄積せよ
鈴木:現在の主力事業の売り上げ・収益アップも重要ですが、こうした「デジタル×アナログ」のユニークな施策をビジネスの将来展望へと結びつけていくことにも大きな可能性があると思います。
現状、LIFULLというと「LIFULL HOME’S」を中心とした住宅・不動産情報提供会社という企業イメージがありますが、このイメージを人生のあらゆるステージでお役に立つ「ライフスタイル提案企業」へと変えていくヒントがDMにはあるかもしれません。
野口:当社が住宅・不動産情報の提供から、ライフステージのあらゆる場面で役立つ提案をしていける企業をめざすにあたってはユーザーデータ基盤のブラッシュアップも必要ですね。当社の個人情報が格納されているデータベースは、郵送DMを発送することを想定していないので、住所、氏名のデータの抽出や行動ログなどとの紐づけ分析にコストがかなりかかりました。セキュリティ上は厳重に管理することがもちろん大事ですが、マーケティング上有効に使えるように整備しておくことも大事ですね。
鈴木:それはどの企業にとっても大きな課題です。貴重な「1stパーティデータ」も、ただ蓄積しているだけでは、どんどん活用価値が下がっていってしまいます。アップデートを欠かさないことで、活用価値の高いフレッシュなデータにしておくことが重要です。
どの企業にとってもユーザーに関するデータは、最も大切な財産です。デジタルでもアナログでも、なんらかのユーザーアクションがあればユーザーデータに反映させて「活きたデータ」としておくことが重要です。ユーザーデータそのものを新しい「メディア」へと活用していくこともできますし、企業とビジネスの価値を高める資産・財産にもしていけるんですね。
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