オンラインシフトへの解決策は「社内」にはない
米国で生き残りを果たしている企業は、完全に「リアル店舗」への投資よりも、オンラインやITを使った流通の効率化への投資に3年前から「必死」だ。流通&小売りの「リアルからオンライン」へのシフトの解決策は「社内」には転がっていない。社内の生え抜き部長に任せたリアル店舗への投資を止め、外部のオンラインのプロを探して、新インフラと新業態へ投資する。その好事例が米Walmartだ。
Walmartが成長を持続できているのは、Amazonのジェフ・ベゾスCEOの対抗馬とされる切れ者のJet.comのマーク・ローリCEOをJet.comごと買収して社内役員として抜擢したからだ。その買収費用は約3,600億円(33億ドル)。さらにWalmartはGoogleとも提携を深めている。そして日本では楽天と組み、ネットスーパーを展開する。
日本でも、店頭における「省力化」の見地から無人レジの話題や、レジ不要の「Amazon GO」が話題になっているが、これらはすべて「表面」の話題にすぎない。日本の流通、小売りが対処すべき遅れの真髄は「店舗・店頭ありきの社内組織とその物流システム網(商品選定〜フルフィルメント〜重量課金構造)の改造」にある。
そのステップには「理屈/理論」と、M&Aにおける「アートな采配」の部分がある。理屈/理論の部分は誰しもに理解が始まっているものの、外部人材や企業をM&Aでどのように吸収すべきかという課題は非常に「アートな采配」要素が多い。
WalmartのCEOに学ぶ外部人材登用の手法
ではWalmartはどのようにして、外部人材や企業のM&Aを進め、機能させているのか。それはWalmartのダグ・マクミロンCEOの存在と采配が大きい。氏は自由度を渡すだけではなく、現事業よりさらに大きな可能性と目標に向けて采配を続けてもらうモチベーションを持たせるのだ。
Business Insiderのインタビューで、ダグ・マクミロンCEOは「We actually want to give you the keys, and have you, your team, take the best of both worlds and drive this thing forward.(自由度を渡すだけでなくウォルマートの車の鍵を預けたい。あなたと、そのチームとWalmart全体を大きく成長させるように運転してほしい)」と語っている。
実際、先のJet.comのマーク・ローリ氏は執行役のトップ5の1名としてEC部門のトップに立っている。それだけではなく、マーク・ローリ氏によるWalmart全体の業態改革の施策を連発させ、Walmartがみるみる変化している様子が株価にも表れている。
マーク・ローリ氏にしてみればJet.comだけでなく、Walmartの資産を使い、両社を大きくさせる事業に挑戦できる。さらには氏がM&Aで吸収した各社(ShoeBuy、Moosejaw、Modcloth、Bonobos、Percel等)にも同様な「自治だけでなく、さらに大きな役割」を担わせることを、各社CEOに考えてもらうような智恵を使うようになったと言う。
流通企業が生き残るカギは、取締役レベルでの外部デジタル人材の登用にある。その決意ができるか。日本の流通企業も、目先の成長を達成するために店舗増設に走るのではなく、数年後を見据えた改革に取り組むべきではないか。
本コラムはデジタルインテリジェンス発行の『DI. MAD MAN Report』の一部を再編集して掲載しています。本編ご購読希望の方は、こちらをご覧ください。