富永さん、マーケターに必要な資質ってなんですか?
MarkeZine編集部:セッションでは、デジタルマーケティングが拡大している昨今の状況を踏まえた上で、マーケティングの概念やCMOの役割が話題になることが多かった印象があります。そこで改めて、マーケターにとって必要な資質について、富永さんのお考えを教えていただけますか?

富永:マーケターの強い信念に関わることだから、一つの意見として聞いてほしいんですが。たった一つだけすごく大切なことがあって、あとはオマケだと思っています。その大切なことというのが「人間理解」。
「どういう状況で人間はどんな行動を起こすのか」、「どういう刺激に対してどんな反応を示すのか」、「認知形成ってどんなことなのか」とか。学問でいうと、心理学とか認知心理学、消費者行動論、行動経済学が肝になると思います。
デジタルに詳しいとか、メディアについてよくわかっているというのは、全部オマケだと考えています。若い人によく「マーケターになりたいんですけど、どうすればよいですか?」と聞かれるんですが、そういう時には「マーケティング以外に、何か一つ深い理解のある学問を作って下さい」と言います。
人間理解がないと、たとえばメディアのダイナミックな変化に追いついていけないような、石頭なマーケターになってしまうと思います。
MarkeZine編集部:マーケターの人材不足といった課題も業界全体的な課題としてあります。組織の中で、「人間理解」について教育し、人材を育成するのは非常に難しそうだと想像するのですが、富永さんはどうされていますか?
富永:結局、自分の背中で語るしかないですよね。日頃から私も人間理解について、根気強く教えているつもりですが、やはり足りていません。一方で、最初から、人間理解の領域に精通している人でチームを固めてしまうのも手なんですが、これも難しい。スマートな人が優秀なわけでなくて、共感力などIQ以外にも重要な要素があるので。
率先して、育成に励んでいるつもりですが、まだまだで偉そうなことは言えないですよ(笑)。ただ、マーケティングでも人材育成でも「意図」を考えるクセを付けると良いかもしれないですね。
私は、ある広告のクリエイティブを見せて、「この広告のクリエイティブにはどういう意図があると思う?」「広告主の意図は何?」と考えさせるマーケティングトレーニングをよくさせます。これを普遍化して、コミュニケーション全般でやってみると、人材育成にもブレイクスルーが見えるかもしれないですね。