「どうしたら伝わるか」深く考えるように
押久保:なるほど、特にBtoCサービスではそういった視点が強みになりそうですね。お二人はBtoBですが、どうですか?
河原:私は、そこまで母親の視点が仕事に活きている感じはないんですが、以前より人の立場に立てるようにはなったかもしれないです。
子どもって全然思い通りにいかなくて、注意しても同じことを何度もやるじゃないですか(笑)。それって、こちらが同じ言い方ばかりしているからかなと、あるとき思って。今、営業のときの視点を活かしてマーケの仕事をしていますが、それに加えてコミュニケーションの点では「どうしたらもっと理解してもらえるか、気持ちよく動いてもらえるか」をすごく考えるようになりましたね。

志知:私も直接的に業務に反映していることはありませんが、保育園でできたママ友や園の先生方など、会社で仕事をするだけでは得られない交流が生まれたことは、視野が広がったなと思っています。
今、当社はBtoBメーカーとしてデジタルマーケティングという新しい分野に取り組んでいるので、広い視野や柔軟な視点は大事だなと感じています。あと、若い社員に優しくなった(笑)。実は、営業時代はすごく厳しい先輩だったんです。
服部・河原:意外~!
押久保:丸くなったわけですね(笑)。違う立場の視点を想像できたり、視野が広がったりというのは、マーケティングの仕事を含めて社会人として、成長する機会になったなと……。私は有給と育児休業を組み合わて、出産後に1ヵ月ほど育児目的のお休みを頂いたのですが、とても共感します。育児に関わると人に対して寛容になれる気がしますね(笑)。ところで皆さんの会社では、男性の育休取得の状況はどうですか?
服部:当社は例がありますね。最長で3ヵ月の方もいます。最初の時期ってすごく大事だと思うので、もっと増えてほしいです。
今がむしゃらに働いている経験は必ず活きる
志知:営業はやはり難しいようですが、他の部署にはいますね。やはり、前線の営業がとってくれると、社内が変わるきっかけになるのかなという気がします。営業ってまだまだ属人的な仕事と思われていますが、プロセスを可視化してマネジメントすれば、もう少しチーム対応もできると思うんです。
河原:確かに、そうですね。当社はまだ男性の育休取得例がないんですが、その代わりフレックスなので、5時にあがってお迎えに行く人は、女性だけじゃなく男性もけっこういますね。
志知:そういうのも大事ですよね。我が家も毎晩そろうのは難しいんですが、朝ご飯は必ず一緒にとるようにしています。子どもってすごく適応力があって、毎日成長していくので、そこに携われるのは貴重だなと思うんです。男性も女性も関係なく、子育てに関われたらいいですよね。
押久保:多岐にわたるお話、ありがとうございました。皆さん、試行錯誤して工夫していらっしゃるんですね。最後に、MarkeZine読者には“おかんマーケター”、そして“ネクストおかんマーケター”も多いので、アドバイスをいただけますか?
服部:マーケターの仕事は、会社の将来を考え未来を作っていく仕事だと思います。母親になるとどうしても動けないときも出てきますが、マーケティングの仕事は長期スパンだから比較的コントロールしやすいですよね。自分の人生経験がお客様理解やカスタマージャーニーを描く際に活きてくるなどプラス面も多いので、ぜひ子どもをもってマーケターとして働くことを前向きに捉えてもらえたらなと思いますね。
河原:ごく普通の営業ウーマンから、出産を経てマーケティングにきたときは、私も不安ばっかりでした。でも「仕事のキャリアを積みたい」という思いで走ってみたら、半年くらいしたら意外とやれるなという感覚になりました(笑)。子どもが生まれる前に一生懸命やってきた経験は次のキャリアパスでも必ず活かせるので、母親になったから何か諦めなくてはいけないとは、全然思わなくていいです!
志知:私も、今がむしゃらに取り組んでいることは絶対に今後も活きるので、「これからも大丈夫」とお伝えしたいですね。特に多様で柔軟な発想が求められるマーケティングは、やっぱり女性に向いているなと感じるので、いったん立ち止まっても、次にステップアップしていく道を見つけられると思います。
