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popInと探るマーケティングの新潮流(AD)

ニューバランスが挑んだWeb記事でのブランディング、効果測定に取り入れた新たな指標とは

 「タイアップ記事を評価し、PDCAに活用できる指標やデータがほしい」。こう考えたニューバランスは、popInが提示する「読了率」という指標に着目した。読了率を新たな指標とし、Webメディアでのタイアップ記事によるブランディングに挑んだ施策の詳細と、その結果を受けたビジョンについて話を聞いた。

タイアップ記事の効果測定における新たな指標「読了率」とは

――本日は、タイアップ記事の効果測定における指標について、ニューバランスとpopInのお二人にお話をうかがいます。まずは、お二人の自己紹介をお願いします。

(左)株式会社ニューバランスジャパン マーケティング部 ブランドマーケティング マネージャー 山崎祐仁氏(右)popIn株式会社 マネージャー 金谷徹氏
(左)株式会社ニューバランスジャパン マーケティング部 ブランドマーケティング マネージャー 山崎祐仁氏
(右)popIn株式会社 執行役員 金谷徹氏

山崎:ニューバランスのブランドマーケティングを担当しています、山崎です。弊社は、製品カテゴリー・店頭販促など、マーケティングチームが複数に分かれています。その中で私は、広報・PRをメインにしたブランド全体の各種コミュニケーション活動をオンライン・オフラインを問わず見ています。

金谷:popInの金谷です。popInは、Webメディアに対しコンテンツレコメンドエンジン「popIn Discovery」を提供し、サイトの回遊率や広告収益の向上を支援しています。今回は「popIn Discovery」の機能の一つである、記事の読了率を測定する機能「READ」を用いて、タイアップ記事の効果測定とアンケート調査をニューバランスさんと一緒に実施しました

――「READ」の機能について、詳しく教えて下さい。

金谷:まず、読了率は、閲覧者がコンテンツをしっかり読んだのか、それとも流し見したのかなどを表す数値です。「READ」は、その読了率を計測するためのツールとして2014年にリリースし、特許(勅許番号:特許第5797871号)も取得しております。

「READ」のイメージ画面。読了率を複数の形で可視化することができる。

「READ」のイメージ画面。読了率はデバイス別、流入元の別に測定可能。

 具体的には、コンテンツの文字数や画像サイズをクローリングし、文字を読み進める一般的な速度などのデータと掛け合わせて、読了予測時間を推定します。そして、閲覧者の画面スクロールに合わせて、全体の何%を読み終えたのかを計測します。

 画面スクロールが止まると、閲覧者が閲覧を中止しているとみなし、測定をストップします。加えて、一度読み終えた後で、再び遡って記事を読み始めると、読了率はさらに高まる仕組みとなっています。

 また、読了率のほかに、平均読了時間/読了率と離脱率の関係も測定することができます。デバイス別、検索エンジンやSNSといった流入元別、コンテンツカテゴリや執筆者別などというように、あらゆる切り口で分析ができるようになっています。

タイアップ記事の読了率からわかったこと

――では続いて、「READ」を用いて実施されたという、今回の取り組みの概要をご説明下さい。

金谷:「popIn Discovery」をご利用いただいている、文藝春秋様の『Number Web』で、ニューバランスさんのタイアップ記事を4週間掲載しました。その後記事接触者に対してブランドリフトアンケートを行いました。

山崎:今回、この取り組みを実施した背景には、タイアップ記事の効果を判断する指標を明示したいという以前からの課題がありました

 メディア側から出てくるレポートでは、PVやCTRなどを指標とするシンプルなものが多いと感じています。滞在時間なども示される場合がありますが、我々が知りたいのは「本当に記事が読まれていたのか」「態度変容が起きたのか」ということです。

 そこで、popInさんから「READ」をご紹介いただき、読了率からそれらが証明できるのかを実験してみました。

――取り組みの結果は、いかがでしたか?

金谷:「READ」は、記事閲覧者の読了率を基に、熟読層・閲覧層・流し見層という3つのユーザーに分類します。読了率が70%以上を熟読層、40%以上を閲覧層、それ以下を流し見層と定義しています。

 今回、3つのユーザーごとに分析をしたところ、読了率が高い層であればあるほど、ブランド想起をして、ブランドイメージや購入意向が高いという結果が出ました

――顧客のロイヤリティを示すNPS(ネット・プロモーター・スコア)も調査されたとうかがいました。

金谷:はい、一般的なNPSスコアでは「この商品やブランドを人に薦めますか?」と問いますが、今回は「このタイアップページを人に薦めたいですか?」という質問をしてみました。結果は、こちらも流し見層より熟読層のほうが13.9ポイントも高く、「他の人にタイアップ記事を勧めたい」と答えています。読了率はタイアップ記事の指標として、重要な役割を持つということが証明できたと考えています。

山崎:タイアップ記事にも、仮説を立てて改善につなげるというPDCAは必要だと考えています。今回の結果を受け、そのサイクルを回すのに、読了率は意義のある指標になるのでは、という手応えを感じました。

伝説のシューフィッター三村氏の言葉から伝わるストーリー

――一般的に、スポーツブランドのプロモーションは契約している選手やチームのエピソードを交えたコンテンツが多い印象があります。今回は、記事のクリエイティブも通常と少し違いましたよね。

山崎:はい。今回のタイアップ記事は、スポーツ系メディアにおいて試合や選手・商品以外のテーマでもブランドリフトは起こるのかという、チャレンジングな企画でもありました

 制作したタイアップ記事は、ニューバランスがアドバイザリー契約を結んだ三村仁司氏へのインタビュー記事でして、彼のシューズ作りのこだわりをメインに構成しています。

 三村氏は、様々な分野のトップアスリート達のシューズ開発に携わり、彼らの大舞台でのチャレンジをサポートし続けてきたシューズ職人です。そのクラフトマンシップ的なストーリーを届けることで、読者にブランドに対する期待感を持っていただき、ニューバランスのチャレンジ精神をメッセージとして届けたいと考えました

タイアップ記事に使用された、三村氏の画像

金谷:調査結果を見ても、ブランドイメージに対し「信頼できる」という回答が二番目に多かったんです。タイアップ記事の内容を、よく理解してもらえていることがわかります。

 もともとニューバランスが好きだから熟読した方もいるかもしれません。ですが、熟読層はブランドにポジティブな印象を持っていると明確になったことに意味があると考えています。

山崎:金谷さんがおっしゃる通り、ブランドリフトの成果以上に、読了率とブランドに対する好意度の関係性を数値化できたのは、意義深いことだと思います。コンテンツの文脈・内容を咀嚼し、読者がきちんと消化している。こうした行動を数値化してくれるのが読了率であり、次のアクションを考える指標になると思います。

今後は、読了率をどのように活用していくかが重要

――今回の調査結果を受けて、今後はどのようなマーケティングを進めていく予定ですか?

金谷:指標として読了率を定着化していくため、同媒体で実施した他のタイアップ記事の読了率や、一般記事の読了率・他メディアでの読了率など、比較するためのデータ収集が必要だと考えています。

 なぜなら、読了率の数字だけでタイアップ記事の成果の良し悪しを判断するのが、必ずしも正しいとは言えないからです。ここが重要です。

 たとえば、タイアップ記事と一般記事の読了率が同じくらいだったとしましょう。通常、タイアップ記事はノンスポンサードの記事に比べて読まれない傾向がありますから、仮に読了率の数字自体が低くても、この場合はタイアップ記事にしてはよく読まれたと判断できるのです。

 またメディアの特性によっても、記事ごとの読了率は変わってきますから、1記事の読了率の数字だけで成果の良し悪しを図るのは難しいのです。

――読了率は、メディアごとに総合的に判断していく指標として活用できるんですね。読了率を基に、相性の良い媒体や読まれやすいコンテンツを探ることもできますね。

山崎:タイアップ記事によるキャンペーン施策においても、これまでの施策や他社の施策と比較するためのデータは必要です。マーケティング施策の検証を行う時、経営層や社内を動かせるような、成果共有の方法を確立させるためにも、読了率はひとつのカギになると考えています。

 しかし、データは成果測定だけでなく、消費者とのコミュニケーションを最適化するための材料でもありますデータドリブンで、すべての行動が予測・可視化されていくという考え方がありますが、データを基に設計された最適な顧客体験を企業から一方的に送り付けるのは、避けなければならないと思います

嫌われない広告を目指してブランドは変わらなければならない

――消費者が「自分自身」のストーリーとして考えていく、ナラティブマーケティングに近い考えでしょうか。

山崎:これまでは「あなたの興味関心に基づくと次はこれ」といったレコメンドがされてきましたが、「あなたが自主的に読んだ・知った・見たという選択・行動が、未来のWebでの体験を作っているんですよ」というコミュニケーションを続けていくことが理想的だと思います。

 これが実現すれば、コミュニケーションの主体が消費者となり、広告もコンテンツとして受け入れられやすくなると考えています。

 「コンテンツのクリック」の先にある、内容理解・咀嚼を目指す。ブランドやメディアは、これらの視点を持って、消費者とのコミュニケーションを図るべきなのではないかと考えます。

金谷:私もその考え方には、とても共感します。広告は、ともすると嫌われる存在です。しかし、本当は広告にも発見はあるし、純粋に良い体験を提供できれば喜んで受け入れられるものにもなり得る。だからこそ、読了率というユーザーごとの理解度を可視化できる指標は、次のコミュニケーション設計に役立つと思うんです。

山崎:広告も、クリエイティブを含め、ブランドが作っているものです。つまりは、ブランドの商品・サービスの一つです広告だけにとどまらずブランドが発信するコンテンツにはメッセージを反映させ、ブランドに対して未来や期待感を抱いていただけるように、コミュニケーションをしていきたいです。

――今回伺ったことを踏まえて、最後に山崎さんの考えるブランドマーケティングについて、お聞かせください。

山崎:お客様には、それぞれにライフスタイルの変化があります。だからこそ、ブランドマーケティングは、長期的に良いイメージを持たれ、何かのトリガーでニューバランスを買っていただく確率を高めるのが仕事だと思っています。

 そのためには、広告・商品・イベントなど、お客様とのタッチポイントを沢山作ることが大切です。弊社では、育成年代のサッカーの大会なども主催し、参加者にシューズの試し履きイベントなども行っています。

 ブランドは、企業だけのものではなく、お客様のものでもあります企業の理念だけでなく、お客様と一緒にブランドを築き上げていくという姿勢で、今後も取り組んでいきたいと思います。

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/06/07 11:00 https://markezine.jp/article/detail/28471