日本におけるオーディエンスデータ活用の先行き
第三部では、再び板倉弁護士より、国内の事業者がGDPRに関連して特に注意すべき内容の解説が行われた。オーディエンスデータを取り扱う上での個人情報保護法上、GDPR上の視点について紹介された。
冒頭に、日本国内の行動ターゲティング広告の問題については、一般財団法人情報法制研究所(JILIS)のオンライン広告研究タスクフォースが取りまとめた「オーディエンスターゲティング広告における匿名加工情報の利用に関する提言」が紹介された。同提言では、行動ターゲティング広告を考える上での基本的な整理と、個人情報保護法上の検討がなされており、適宜参照をして欲しいとのことであった。
オーディエンスデータについては、従来、個人情報保護法が定義する「個人データ」(2条6項)に該当しないものとして取り扱われてきた。一方で、データの内容が履歴情報である場合等、詳細なものとなっている場合には、元データとの照合によって「個人データ」に該当する場合も少なくないとのことだ。JR東日本のSuicaが問題となった事例では照合の容易性が議論となったが、メディア事業者が取り扱っている情報についても照合可能性があり、事例ごとの検討の必要性が説明された。
また、先般の個人情報保護法の改正の過程では、Cookieが個人識別符号に該当するかどうかについて議論となったほか、要配慮個人情報であることが推知(プロファイリング等による生成)される場合には法律上の「取得」となる可能性があること、購買情報や位置情報が蓄積されたこと等によって特定の個人の識別又につながる可能性があることが指摘された。
Facebookのシャドープロファイルの事例が紹介され、広告でも同様の仕組みを用いていることが問題となる可能性があること等、具体例を踏まえた解説がなされた。第一部の内容と合わせて、日欧それぞれの法改正によって、これまでは許容されてきた手法であっても、今後は慎重な再検討が必要であることを意識させられた。
以上、各講演で特に重要と思われたポイントのみをお伝えした。実際には、講師からさらに多くの情報提供が行われており、ここでお伝えしたことはほんの一部である。これを機会に、マーケティング業界におけるデータ保護の必要性についても、再確認をしていただけると幸いだ。
参考サイト
GDPR原文 “REGULATION (EU) 2016/679 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 27 April 2016”
株式会社KDDI総合研究所 GDPR前文和訳「EUデータ保護一般規則前文私訳の公開」
一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC) GDPR条文和訳「個人データの取扱いに係る自然人の保護及び当該データの自由な移転に関する欧州議会及び欧州理事会規則(一般データ保護規則)(仮日本語訳)」
一般財団法人情報法制研究所(JILIS)オンライン広告研究タスクフォース 「オーディエンスターゲティング広告における匿名加工情報の利用に関する提言」