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変化する検索動向、自動化で広告運用の効率・効果改善へ!ヤフーの新機能「動的検索連動型広告」に迫る

 ヤフーが、キーワードの入稿を必要としない「動的検索連動型広告」をリリースした。プロモーション対象となるWebページをクロールし、サイト内容と関連性の高い検索クエリに対して自動的に広告を配信する。「検索連動型広告特有の運用課題に向き合いながら、新たな広告掲載機会を創出したい」と語るヤフーの大町一輝氏に、サービスの概要と効果的な活用方法についてうかがった。

新規検索クエリの比率は3割超!新たな掲載機会をとらえるヤフーの「動的検索連動型広告」

 電通発表の『2017年日本の広告費』によると、インターネット広告媒体費約1兆2,000万円のうち、運用型広告費は80%に近い9,400億円になるという。多くの企業でデジタル・トランスフォーメーションが加速している。一方で管理するキャンペーンも増え、運用の負担が重くなっているという課題が、マーケターや広告代理店の間にある。

 特に運用型広告の先駆けである検索連動型広告は、検索クエリの選定が不可欠だ。自社サービスへの検索データなどをもとにキーワードを選定する作業は、スキルが求められる。また多くの商材をもつ企業の場合、膨大な数のキーワード管理と運用が発生し、十分な広告効果を発揮するには多くの労力を伴うことになる。

 さらに検索連動型広告特有の運用負荷を指摘するのは、ヤフーで検索連動型広告の事業を統括するサービスマネージャーの大町一輝氏だ。

ヤフー株式会社 メディアカンパニー 検索統括本部 検索連動事業本部 サービスマネージャー 大町一輝氏
ヤフー株式会社 メディアカンパニー 検索統括本部 検索連動事業本部 サービスマネージャー 大町一輝氏

 「世の中の流行や動きに合わせてインターネットユーザーの検索傾向は日々変化し、新しい検索クエリが常に生まれています。それらをすべて追いかけて、広告運用に反映することは簡単ではありません」(大町氏)

 ヤフーが2017年に行った調査によると、過去半年間に使われた検索キーワードのうち、30%以上がはじめて検索されたキーワードである。検索連動型広告における機会損失を防ごうとすると、キーワードの追加や精査によってある程度は軽減できるものの、日々新たに生まれるキーワードに対する手作業での対応は後手に回り、限界もある。

新規検索クエリと既存検索クエリの割合
新規検索クエリと既存検索クエリの割合

 そこでヤフーは、検索連動型広告「スポンサードサーチ」において、運用工数を削減しながらも幅広い検索クエリに対応し、新たな検索流入を獲得できる「動的検索連動型広告(Dynamic Ads for Search:以下、DAS)」を5月末にリリースした。

入札キーワード選定、広告タイトルいらず

 では、DASの特長と従来の検索連動型広告との違いを見ていこう。まず大きく違う点は、入札キーワードが不要であることだ。従来の検索連動型広告では、広告グループを作成し、入札キーワード・広告文(タイトル・説明文)の設定が必要だった。キーワードのカテゴリごとに広告グループを分けたり、効果の悪い入札キーワードを停止したりと、キーワード数が増えるに従い、その運用負荷も高まる傾向がある。

 対してDASは、システムがプロモーション対象のWebページの情報を利用してユーザーの検索クエリとの関連性に応じて自動的に広告を配信するため、キーワードの運用が不要だ。

 DASの設定に必要なものは、広告配信対象とするWebページのURLリスト(ページフィード)と、広告の説明文、そして予算と配信先のターゲット。Webページの情報をもとに最適な広告タイトルが自動的に生成されるため、タイトルの入稿も不要である。スポンサードサーチの追加機能にあたり、掲載位置や掲載順位の仕組みはこれまでと同様だ。

従来の検索連動型広告とDASの比較イメージ
従来の検索連動型広告とDASの比較イメージ

 また、定点的にWebページの情報を取得しているため、自動的にタイトルや掲載される検索クエリも更新され、従来の検索連動型広告よりも運用工数をかけずにWebページの内容と連動した広告掲載が可能となる。

 「マーケターや代理店の運用担当者にとって負荷がかかっていた、入札キーワードの選定や広告ごとのタイトル作成。これらをシステムに任せることで、運用負荷を軽減させることができます」と大町氏。広告の説明文を動的に出し分けるアドカスタマイザー(※)も併用すれば、さらに広告のクリエイティブが最適化され、バラエティに富んだものとなる。

※ スポンサードサーチの機能の一つ。データ挿入用のリストを用いて、広告文に事前に登録した文字列や数値を自動で挿入できる。

サイト流入増に、新たなキーワード発見の収穫も PDCAが成功のカギ

 では、DASを掲載したときの成果はどうだろうか。リリース前にヤフーが行った複数アカウントでの配信試験では、従来の検索連動型広告に比べCTRが20%向上したという結果が出ている。これはサイト情報と関連性の高い検索クエリに対し、自動生成された回答力の高いタイトルで広告が掲載された結果といえる。従来のキャンペーンとDASのキャンペーンを併用することで、コンバージョン単価を維持したまま、コンバージョン数は10%増加となったそうだ。DASにより新たな検索クエリからの流入が加わり、サイトへの流入総数の増加、そしてコンバージョンの増加へとつながることが期待できる。そして「数字以上の成果のひとつに、ロングテールキーワードの発見がある」と大町氏は話す。

DASの成果
DASの成果

 DASは、実際に広告が掲載されたユーザーの検索クエリがレポートでわかるため、従来の運用では難しかった、複数の単語の組み合わせである「ロングテールキーワード」など幅広い検索クエリを発見できる。

 「DASで発見した一定以上の効果が見込める検索クエリを、従来の検索連動型広告での入札キーワードとして登録し、配信を強化するような運用も可能です。従来の検索連動型広告に完全一致でキーワードを登録することで、DASよりも優先的に広告を掲載できます。逆に意図しない検索クエリに関しては、対象外キーワードとして除外設定することもポイントです。発見と改善のサイクルを回していくと、さらに効果が上がるのではないかと見込んでいます」と大町氏。

 ヤフーのDASは、登録したWebページのURLすべてを広告掲載の対象とするだけでなく、プロモーション目的に合致したURLを指定して配信対象にするなど、配信対象のURLを柔軟に指定することが可能だ。広告掲載開始後は、キーワード単位だけでなく、URL単位でも効果を見極め、効果の見込めないURLは配信から除外するといったメンテナンスも重要だ。キーワード単位とURL単位、双方の視点で効果検証することでさらなる効果向上が期待できる。

DAS掲載開始後のメンテナンス
DAS掲載開始後のメンテナンス

旅行や不動産、ECサイトなどにDASは最適

 運用負荷の軽減、さらに従来の検索連動型広告との相乗効果が期待できるDAS。より活用しやすい業種として大町氏は、頻繁に更新される多くの商品・サービスをあつかうサイトとして、旅行・宿泊、不動産、ECなどを挙げた。これらサービスがDASを利用すると、商品名や商品の特徴を示す複数語句の羅列など、詳細かつ複雑なキーワード検索に対しても獲得機会を得られるため、特に効果的である。逆にDASに適さないケースとしては、画像が多いページやログインが必要なページなどは、Webページ情報をクロールできず、広告を配信できない可能性があるため注意したい。

 またDASは、ロイヤリティの高いユーザーの獲得にも利点がある。たとえば旅行サイトにおいて、「沖縄旅行」というビッグワードで流入・獲得した場合と、「国内旅行 沖縄 首里城 日帰りツアー」とロングテールキーワードを含んでいた場合。後者のほうが、より具体的なニーズが顕在化しており、興味が高いユーザーであると考えられるだろう。DASを活用することで、このようなピンポイントなニーズをとらえて、関連性が高いWebページへ誘導しコンバージョンに導くことができる。

 「DASのみの運用で、大きくコンバージョン単価を抑えられるというものではありません。ビッグワードとロングテールキーワード、そして従来の検索連動型広告・DASの組み合わせで、最適なコストや獲得の質を業種ごとに見極める運用がいいですね」(大町氏)

 さらに大町氏は、DASの運用ポイントとして、時間をかけて改善に取り組む姿勢の必要性を説く。十分な学習データが蓄積され、広告配信が最適化されるまでには一定の期間を要する。大町氏は、「学習データを蓄積するため、すぐに判断をせずDASの開始からしばらくはパフォーマンスを見続けていただきたい」と語る。

ユーザーの検索体験を向上し、より良質な検索メディアへ

 今後も、DASを含め、広告に関連したシステムのアップデートを予定しているスポンサードサーチ。2018年1月から対応した、複数デバイス間のコンバージョンを測定する「クロスデバイスコンバージョン」の導入による広告効果の可視化や、自動入札の機能強化、ダッシュボードをはじめとした広告管理ツールの改善などを計画中だ。また、パーソナライズの観点では、Yahoo! JAPANの保有するデータを利用したターゲティング機能も準備を進めている。

 運用業務の支援としては、広告主のアカウントに合わせて最適化案を提案する「最適化タブ」と呼ばれる仕組みを6月上旬にリリースした。これは、広告管理ツール上でインプレッションやクリックの獲得につながる入札キーワード、広告表示オプションの登録をリコメンドする機能である。「運用の自動化と配信パフォーマンスの向上、および運用担当者の負荷軽減は、スポンサードサーチとしても取り組んでいきたい分野です」と大町氏。

 今年5月8日、Yahoo! JAPANアプリでは、検索結果の表示を大きくリニューアルした。ユーザーが求めている検索結果を1回の表示で適切に届けることが狙いである。検索機能の向上だけでなく、ユーザーを惑わすような不正な広告の防止や市場の健全化にも力を入れている。取り組みの一環として広告掲載基準を更新。広告の信頼性に対する関心が高まっていく中、不適切なクリエイティブなどには注意を払っていく構えだ。

運用負荷を軽減し企業の新しいチャレンジをサポート

 SNS広告などが台頭し、当初は検索連動型広告市場の陰りが予想されていたが、着実に成長は続いていると大町氏。そして検索行動に変化が出てきており「ユーザーの興味関心の度合いにより、どのサービスで検索するかという選択肢が生まれている」という。

 「インターネットショッピングも、検索ポータルサービスとECサイト内のどちらで検索するかで、ユーザーの姿勢には違いが見えます。ヤフーは、路線検索や地図検索など含めた『検索行動』すべてを一つの組織で管轄し、検索行動に対する課題解決力を研鑽しています。ユーザーの利便性、安全性を高め、検索トラフィックへつなげたい。そしてそのトラフィックに対してより良い広告を表示できるよう提案していきたいと考えています。そのためにも、検索連動型広告は運用側の負荷を下げ、広告主の皆様が新しいことをチャレンジするきっかけになるよう、さらなるサービスの強化を進めて参ります」(大町氏)

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/06/08 10:00 https://markezine.jp/article/detail/28488