5G時代のマーケティング
これら5つの領域は生活者の環境の変化だけでなく、企業のマーケティング施策にも関係する。5Gによって様々なIoTデバイスが接続され、取得可能なデータの拡大と活用、企業と生活者のタッチポイントの多様化といった2つの側面で技術革新が促進する。
データ活用の進展
IoTが本格的に普及し多数のデバイスとの同時接続が可能となることで、これまで以上に多くのデータが入手・活用できるようになる(図表3)。

インターネットの普及によってWeb上の行動から生活者の興味関心を把握できるようになり、スマートフォンの普及によって位置情報や決済情報等からリアルの行動や購買を把握できるようになった。さらにスマートシティやスマートホーム、交通等からのIoTのデータによってこれらの情報を補完することによって、生活者の趣味嗜好の推定精度の向上や興味関心が変わったり深まったりするタイミングの把握ができるようになるだろう。
タッチポイントの多様化
街中や交通機関においては、大型のデジタルサイネージのディスプレイであれば、インターネット接続の高速化や大容量コンテンツが配信可能になることによって、4K・8KやVR・ARといったコンテンツも十分に配信できるようになる。これにより没入感が高くインタラクティブなユーザー体験を促すマーケティング施策も可能となる。
家庭内においても、テレビ中心の時代からテレビとスマホのクロスデバイス施策が重要となっているように、スマートスピーカーや冷蔵庫等の家電も加えた情報接触を考慮したマーケティング施策が求められるようになるかもしれない。
またコネクテッドカーや自動運転車が実現することで、運転という集中することが必要な作業から解放される。こうした移動中の自動車内は家庭内に次ぐリラックスできる生活環境でもあり、企業と生活者を結びつける新たなメディア空間としても期待が集まっている。
こうして5Gと接続されることによって、様々なデバイスが企業と生活者を結びつけるタッチポイントとして重要性を増していくだろう。一方で、それぞれのタッチポイントの特性は大きく異なるものであり、生活者のそのときのシチュエーションや興味関心等のコンテキストを考慮したマーケティング施策も重要となっていくだろう。