マンガアプリから新たなヒット作を生む喜び
――現在のお仕事について教えてください。
まず、アプリ事業部のマネタイズ部分と、プロモーション出稿にまつわるディレクションです。アプリ事業部は、マンガ事業とソーシャルゲームの攻略サイトを運営するエンタメ事業にわかれているのですが、その両方を見ています。
もう一点はアプリ事業部の予算と実績の管理です。こちらを元に、各プロダクトのKPIを決め、実行に移しています。マンガ事業は、協業モデルでスクウェア・エニックス様と「マンガUP!」、白泉社様と「マンガPark」という基本無料のマンガアプリを運営しています。マンガアプリの収益の内訳は、ユーザー課金とリワード広告とアドネットワーク。過去の実績を元に、予めデイリーの推移を想定します。進捗を確認し、想定数値と差分が出てくる部分の原因を重点的にチェックし施策を動かしていきます。DAU(1日にサービスを利用したアクティブユーザー)や売上ARPU(1ユーザーあたりの収益)、継続率を主に見ています。

たとえば年度末の3月は繁忙期のため、クライアントからの広告入札単価が高く、収益も上がります。しかし翌月は出稿が落ち着くという予測が立てられますから、各アドネットワークに案件状況をヒアリングし、より収益性の高いアドネットワークで広告掲載ができるように調整をしています。また両アプリで掲載されている作品が、ソーシャルゲームとコラボキャンペーンを行うというお話などがあれば、早めにお声がけして案件化に動きます。ときにはARPU維持のためアプリプロデューサーと話し合い、新規のアドネットワーク追加を検討したり、新しい広告枠を設けるなどの対応もしますね。
――マンガアプリを運営するおもしろさは、どのようなところにありますか?
「マンガUP!」をリリースし、約1年半を迎えようとしていますが、アプリでヒットする作品と書籍として売れるマンガは違うということがわかってきました。バナークリエイティブの見せ方を工夫することで、ユーザーの興味を引き、アプリで日の目を見る作品もあります。それにより、紙の書籍が重版になることもあります。ラノベ原作のコミカライズを掲載したところ、原作の売り上げが伸びたということもありました。これには協業している出版社さんもとても喜んでいらして、アプリを運営していて嬉しい瞬間ですね。読者を奪っているのではなく、アプリが出版社さんや雑誌を盛り上げているという話を聞くと、やりがいを感じます。男性向け作品における広告バナーのヒットの法則はわかるようになってきましたので、次は「恋愛漫画」と一つで括ることはできない、少女漫画のヒットの法則を模索中です。
ユーザーもパートナー企業も、「よかったね」と思う仕事を
――仕事で大切にしていることは、どんなことでしょう。

and factoryに入社してから、利用するアドネットワークの選定や、出稿先の媒体選定など、意思決定する場面が多いです。そのときに社内外含めて誰かが損・負担をする判断をしない、ということを心がけています。たとえば自社アプリのアドネットワーク収益を優先するならば、入札方式ではなく固定の単価で取引をするという選択肢もあります。しかし、費用対効果がわからない状況で、メディア側から固定単価にしたいと一方的に求めてしまうと、事業者からの印象も良くないですし、長い目で見ると、メディアの成長につながらないと考えています。改善を繰り返し、広告効果が良くなる広告枠を持った上で、事業者さんに高単価で枠を買っていただけるのが、メディアの価値や成長につながりますよね。
またユーザーに対しても、広告の見せ方には気を配っています。スマートフォンの広告バナーはクリエイティブや掲載位置、また求めていない情報が出るなど、ユーザーから「いらないもの」と思われがちです。しかし、これはメディア側の意識一つで改善することが可能であり、自社サービスのユーザー属性を理解しフィルター精度を上げれば、適切な広告を掲載できるはずです。広告の運用含めて、内部でのユーザービリティを考慮した前提で、広告収益を上げていくのが、メディアの本質だと考えています。
――最後に、今後の目標についてお教えください。
and factoryは、私の担当するアプリ事業の他IoTを活用した日本初のスマートホステル「& ANDHOSTEL」などIoT事業も展開しており、その先進的な取り組みに多方面からご注目いただいています。アプリ事業では日々ユーザーのことを想い、妥協せずに地道で細やかな改善を重ねています。その中で培った独自のノウハウによって、世の中に新しい価値を創造できていると感じていますので、そういった成功事例をどんどん外に発信していければと。そうすることで、and factoryがスマートフォンとアプリを軸に事業を広げ、「人々の生活にプラスを届け」ているということを、業界内外にアピールできたらと考えています。