デジタライズド・リテイルカンパニーを目指して
――ロクシタンジャポン(以下、ロクシタン)は、店舗とECの顧客情報を一元管理し、データドリブンなデジタルマーケティングを進めておられます。まずは、その進捗について教えて下さい。
吉屋:ロクシタンは、店舗を中心にデジタルを活用していくデジタライズド・リテイルカンパニーとして、デジタルトランスフォーメーションを進めています。
現在は、お客様情報を統合するだけでなく、その質を高めるフェーズに入っています。これは、店舗接客を通してブランド認知・エンゲージメントを高めながら、お客様の情報を獲得・データ化していくことを狙いとしたものです。
ロクシタンの店舗は、ショップスタッフが立ったまま接客を行うウォークインタイプの作りになっています。これにより、ショップスタッフが多くのお客様とコミュニケーションを取れるため、お客様の好みやブランドへの反応といったデータを集めやすいというメリットがあります。こうして得た情報をデータとして蓄積することで、スタッフのスキルやブランドの力を上げるために活用していくことを今後の目標としています。
――顧客のブランド認知・エンゲージメント獲得のために、どのようなマーケティングコミュニケーションを実施されていますか?
安倍:ロクシタンが持つ、南フランスのプロヴァンスを発祥とする世界観やライフスタイルをご提案しながら、製品を理解していただけるようなコミュニケーションを意識しています。
お客様の選択肢や購買チャネルが多様化する中、我々はロクシタンのお店や公式ECサイトで購入する意義を、ブランドの世界観を通して伝えていかなければなりません。たとえば、4月に行ったイースターキャンペーンでは、卵をモチーフとした店舗ディスプレイ、ECサイトでは卵探しのゲーミフィケーションを取り入れたコンテンツを用意し、ロクシタンでの体験を印象付けようと図りました。店舗とECで同じ世界感を作り出すことで、ブランドのメッセージをしっかりと伝えていくように心がけています。
既に認知度の高いブランドがソーシャルを活用する意義
――続いて、ソーシャルの活用についてうかがいます。ロクシタンでは、ソーシャルをどのような位置づけで運用されていますか?
吉屋:ソーシャルは、新規顧客の獲得や若い世代とのコミュニケーションを図り、ファンであるお客様のエンゲージメントを高めていく場として活用しています。
自社調査ではありますが、ロクシタンの認知はすでに高く、購入経験やギフト、ホテルのアメニティでの使用機会もあり、ブランドへの好感度は高いことがわかっています。そのため、データドリブン×CRMで行うe-mailやDM施策では、購入頻度を上げることを、ソーシャルはブランドの世界観に共感し、理解を深めてもらうことを目的としています。
――ソーシャルで使われるクリエイティブは、製品画像だけでなくGIF動画で動きを取り入れたりと工夫されていますよね。
安倍:クリエイティブは、単純に「映える」ことだけでなく、「この製品があると、こんなライフスタイルが生まれるんだ」とお客様にイメージを持っていただけるところまで作りこみます。
たとえば、単純に製品の写真を投稿するのではなく、タグ付けした使用シーンに合わせた写真を使ったり、場合によってはマッサージ方法も紹介するなど、具体的な製品の使用イメージを印象付ける工夫をしています。
加えて、これまでショップスタッフが直接お話していた製品にまつわるストーリーや美容関連のトピックスを、サイト上のコラムなどでコンテンツ化しています。これにより、ECや各種ソーシャルなどのデジタルチャネルでも店舗起点のブランドメッセージを伝えることができるようにしています。