共通点は、「誠実さ」と「普段からのエンゲージメント量」
問題が起こった後の「回復」にとって何が重要であるか、これらの事例を参考に考えてみると見えてくることがあります。
1つは、企業の本質的な「誠実さ」です。多くの炎上騒動からもわかる通り、最も嫌われるのは「潔く誤りを認めない」姿勢や「真実を隠し通そうとする」姿勢です。こうした企業姿勢が透けて見える時、生活者の反感を買って炎上はさらに大きくなります。
あらゆる情報が様々な角度から飛び交うSNS時代において、もはや嘘をつくことは不可能です。問題が起きた際には、できる限り情報を開示し、嘘なく生活者と向き合う「誠実さ」が問題からの回復には欠かせないと言えます。
また、もう1つは、企業やブランドの普段のSNS投稿に対する「エンゲージメント量(口コミの量)」との相関です。理想的な方法で「炎上」を鎮火させた3社は、いずれも普段からSNS投稿のエンゲージメント量が競合と比べて高い傾向にありました。
※注:平均値は無印良品の代表的な競合企業7社(エンゲージメント数が極端に低い企業を除く)を
筆者が選んで調査期間内のエンゲージメント数の平均値を算出。
以下含め、すべてポジティブ、ネガティブ双方の口コミを含むエンゲージメントの総数。
※注:平均値はチロルチョコの代表的な競合商品7ブランド(エンゲージメント数が極端に低い商品を除く)を
筆者が選んで調査期間内のエンゲージメント数の平均値を算出。
※注:平均値は龍角散ののど飴の代表的競合商品5ブランド(エンゲージメント数が極端に低い商品を除く)を
筆者が選んで調査期間内のエンゲージメント数の平均値を算出。
これはつまり、普段から質の高いブランドの支持者、賛同者を数多く集め、コミュニケーションが取れている証拠です。今回の事例では、いずれも企業が訂正情報を発信した直後からブランドを支持し、応援する旨のコメントを多く集めており、「炎上」が「称賛」に転換するきっかけとなりました。
生活者の情報基盤であるSNS上で、良質なコミュニケーションによって普段から企業やブランドのファンを増やし続けることは、商品、ブランドの認知や好意、売上を高めるだけではなく、SNS上で起こる企業の危機を救うためのレジリエンス要素としても非常に重要であることを示しています。
SNS時代における、“強い”企業、ブランドになる
下手に炎上の燃料を投じないように静観することも時には有効です。ただ、それだけでは生活者と真に理想的な関係を築けているとは言えません。透明性のある企業姿勢を持ちながら、日々ファンとのエンゲージメントを育む努力を続け、「炎上」が起きた際には状況を判断しつつしっかりと説明を行う。そうすることで、普段から強い絆でつながるたくさんのファンが支持や応援に回ってくれる可能性が高まります。
こうした対応ができる企業、ブランドが、「炎上」が避けられないSNS時代において“強い”企業、ブランドになっていくのではないでしょうか。
※本稿の執筆にあたり、「計算社会科学」が専門で炎上の鎮火に関する研究も行っている東京大学 鳥海不二夫准教授のアドバイスをいただきました。
