網羅的なユーザー理解で偏りをなくす
MZ:次に実際にコミュニティマネジメントを進めていく上で必要なことを教えてください。
鶴川:現在弊社では、「ユーザー理解」「施策の立案、推進」「施策の分析」というプロセスでコミュニティマネジメントを行っています。ですので、各プロセスで必要なことをお話ししたいと思います。

鶴川:まず「ユーザー理解」では、定量と定性の両軸で分析していますが、一番重要なのは定性分析だと思っています。
TwitterやFacebookなどのSNSはもちろん、カスタマーサポート(CS)に来る問い合わせ、すべて網羅的に見ないとバイアスがかかってしまいます。そうすると、一方のお客様にとってはメリットがあっても、もう一方にはデメリットが出てきてしまう。それは一番やってはいけないことです。
MZ:すべてを網羅的に見て、誰かが不幸にならないようにすると。
鶴川:お客様全員を平等に扱うためにも、できる限り偏った施策は避けています。
MZ:定性分析を進めていくと、心ない意見も出てきて向き合うのが大変じゃないですか。
鶴川:そういった意見はゲームをより面白くする貴重なご意見だと考えています。苦情やクレームといったご意見がお客様から出てくるということは運営側がそのゲームをもっとやりたい・続けたい、でもその方たちの期待値を運営が超えることができなかった。ですので、クレームに見える意見も良い体験の提供には非常に重要だと思っています。
コンテンツ×期待値で共感体験を設計
MZ:施策を立案・実行していく際のポイントはなんでしょうか。
鶴川:コミュニティ施策を立案・実行していく上で重要なのは、最初に共感体験を設計することです。コミュニティは、同じ目的や興味・関心を持った人同士が、お互いの考え・思い・行動に触れ共感することで形成、維持されます。つまり、コミュニティを作るには人々の共感を生む必要があるのです。
そして、共感体験を設計するには、「提供するコンテンツ」と「満たせる期待値」の掛け合わせが求められます。「提供するコンテンツ」は、ゲームの運営方針やキャラクター、ストーリー、起用する声優、イベントなど様々です。一方「満たせる期待値」には、仲間を増やしたい、運営と関わりたい、自慢したい、勝ちたいなど、ゲームを通じてお客様がどうありたいのかという姿が入ります。

この考え方はゲームアプリのみならず、自身が提供する商品・サービスがどういったニーズを満たすものか、というマーケティングには必ず求められる考え方だと思います。
MZ:行った施策を振り返る時はどのように行うのでしょうか。評価するのが非常に難しい領域かと思いますが。
鶴川:コミュニティ関連施策の結果の可視化は、現在特に注力している部分です。その中でも重要視しているのは、仮説をもとに分析の着眼点を見つけることです。
仮説に関しては、施策を通じて想定通りの体験を提供できた時、どういった事象が起こるかを考えます。その仮説をもとに、データ分析のチームやデジタルマーケティングチームと連携して「仮説を実証するために、施策をお客様に提供した際にどういう事象が起こり、何に対してどういう影響を与えるか」を、企画段階で分析項目を決めています。これは非常に重要です。
施策後に「こういうデータを取りたいんだけど」といった時に、そのデータが取れないとなってしまったら、施策から何も得られなくなってしまいます。最終的に巻き込むべき人は、企画が固まる前から巻き込むべきです。