コンバージョンを追求した結果リターゲティングに収束した
鹿毛:こうして「パブリックDMP」と「プライベートDMP」を使って様々なターゲティング手法でディスプレイ広告が運用されていったわけですが、しばらくするとリターゲティングに収束していきました。コンバージョン率やCPAの観点から圧倒的にパフォーマンスが良かったのがリターゲティング広告だったからです。
やがて、DSPを使っているのにほとんどがリターゲティングのみを使用するという状況になっていきました。その頃にはYDNでもGDNでもリターゲティング広告を配信することができるようになっていたので、それってDSPを使っている意味があったっけ? という疑問が生まれてきました。
追い打ちをかけるように、リターゲティングに特化したDSPであるCriteoが登場。通常のDSPによるリターゲティング広告よりも抜群にコンバージョン率やCPAが良かったので、使っていた5社のDSPを4社切ってCriteoに集約する、といった動きがでてきました。結局、運用型のディスプレイ広告はGDN、YDN、Criteoという流れに落ち着いていきました。
 鹿毛:「パブリックDMP」を使ってDSPから広告を配信すると、多くのケースでクリック率のリフトが見られました。しかし、コンバージョン率やCPAの観点から言うと、ノンターゲティングのものとの有意差は見出しにくい状況であり、検索連動型広告のコンバージョン数を成果数や効率で補完するという存在には至らなかったという認識です。
アトリビューション分析の誕生
鹿毛:実はここまでの一連の流れが、アトリビューション分析登場の背景となっています。ここまでの話は「ディスプレイ広告もコンバージョン率とCPA、コンバージョン数を追求すべきである」という考えが大前提としてありました。しかし、その観点では当初期待していた検索連動型広告ほどの効果は上がりませんでした。このままでは広告主がリターゲティング広告以外のディスプレイ広告の出稿を停止してしまいかねません。

鹿毛:その反論として、ディスプレイ広告は「広く告げる」「買う理由やそのブランドを選択する理由を作る」という以前からの広告の目的を遂行できることに価値がある、という意見が出てきました。それもまた正論だと思うわけです。
しかしながら、今のディスプレイ広告で需要の喚起や認知を広めることは個人的には正直難しいと思っています。なぜなら、ディスプレイ広告は新聞で言ったら五段にも満たない突き出しや記事中など雑報ぐらいの大きさです。それで認知をとりましょう、というのはインターネット以外の媒体と比較すると厳しいでしょう。
ですが、認知でもCPAでもない広告の使い方はまだ他にもあるわけです。たとえば、テレビでCMを見たり、SNSであるサービスのことを知ったとします。しかし、毎日何十というブランドに接しているわけですからすぐに忘れてしまう。それをリマインドする効果はあるのではないかと思います。
そもそもディスプレイ広告の役割というのはコンバージョンだけを追求するものではないはずだ、ディスプレイ広告にコンバージョンをアシストする間接効果があるとするならば、それを可視化して本当のディスプレイ広告の価値を測るべきだ、という流れからアトリビューション分析が登場してきました。
