ネットでの炎上を受けながらも、売上当初目標比500%を達成
――「ワークウェアスーツ」の売れ行きが大変好調だと伺いました。数字的には、現時点でどの程度の売上なのでしょうか?
中村:2018年3月末の発売開始後、ECサイト「ロコンド」では、17万アイテム中、月間総合売上が1位になりました。女性の靴を中心に取り扱うECサイトにもかかわらず、男性の作業着が1位になったのは快挙です。現時点では、当初予想の5倍を超える売れ行きとなっています。目標としては年間売上1億円を目指しています。
――開発や販売体制の構築など、各過程においてはどのようなことに意識していらっしゃいますか?
中村:まず開発過程では、「スーツ型」というアイデアが出るまでに苦労しました。ストリート風のものやカジュアルなものなど多くのアイデアが出ましたが、最終的には「終業後にデートに行ける作業着とはどのようなものか」を考え、フォーマル感を重視したスーツ型の商品というアイデアになりました。

中村:試験運用当初は、現場の技術員から多くの反発の声が上がりました。スーツ型の作業着になったことで、これまでよりも身なりや髪型などに気を配る必要が出てきたのです。「面倒くさいから元の作業着に戻してくれ」という意見が集まりました。しかし1~2ヵ月ほど経つと、お客様や家族、友人から好評の声をいただくようになり、慣れも手伝って反対の声は少なくなりました。
販売体制を構築する際は、常にお客様の声を反映することを意識しています。販売当初は法人顧客のみを想定していたのですが、ネットで話題になった影響で個人のお客様からのお問い合わせが増え、ECサイトでの販売を開始しました。また、「女性用も欲しい」という声を多くいただいたため、5月には女性用の販売もいたしました。お客様の声に対して、スピード感を持って対応することに重きを置いています。
――実際に「ワークウェアスーツ」を着用されている方々からは、どういった声を聞きますか?
中村:見た目がフォーマルなため、着用される方々は髪形など身の回りのことに気を使い始める傾向にあります。そのため、以前とは見た目の印象が変わり、「顧客とのコミュニケーションがとりやすくなった」「関係が良くなった」という声をいただきます。また、これまでは作業着とスーツを1日の中で使い分けていた方も多く、「1枚で済んで楽になった」という声もお聞きします。
――企画から商品化までの過程において、社内でも様々なハードルがあったかと思います。「ワークウェアスーツ」を商品化する上で最大の障壁は何だったのでしょうか?
中村:開発や試験運用の過程で、労力と時間がかなりかかったことです。幸いにも、社内運用当初から「購入したい」という社外からのお問い合わせを数多くいただいていたため、事業化がスムーズに進みました。
――今後はどういった展開をお考えでしょうか?
中村:元々アパレルの会社ではないところからスタートしていますので、洋服に精通したアパレル企業様とは違った視点を持っている点が強みです。お客様は、普段から作業着を着て働いていらっしゃる方々だけではありません。スーツを着用しながらも、現場作業も行うビジネスマンの方々からの購入も多いです。そういったビジネスマンのニーズにもお応えできるよう、カラーやサイズの充実化を予定しています。
大切なのはコンセプトをシンプルに伝えること
中村:「ワークウェアスーツ」は、「作業着を着て働く人」と「スーツを着て働く人」のすき間を狙った商品です。今後展開を予定している新ブランドでは、たとえばITベンチャーのような企業にお勤めの方にも着用していただける、デザイン性の高い高機能セットアップも取り扱っていくつもりです。
――ネット上で賛否両論を呼んだ「ワークウェアスーツ」ですが、話題になってからはどういった変化がありましたか?
中村:いわゆる肉体労働系の業界だけでなく、多数の業界から法人問い合せ件数が月に300件以上ありました。おかげさまで、法人向けの大口注文は現在予約3ヵ月待ちの状態となっております。
――最後に、MarkeZine読者であるマーケターの方々のヒントになるような有益なアドバイスがあればお願いできますでしょうか?
中村:「ワークウェアスーツ」は社会性が高く、これまで誰も目をつけていなかった商品コンセプトであったからこそ、賛否の声が多く集まったのだと考えています。炎上を予期していたわけではまったくありません。ものづくりを真摯に行いながら、これまでになかった新しい考え方を打ち出すことが大切だと思います。また、新しいコンセプトは世の中に伝わりづらいものですので、コンセプトをわかりやすく伝えるメディアとして、動画が非常に有効だったのだと思います。
――どうもありがとうございました。
これまでになかった新規性や革新性に優れた商品やサービスが登場すると、「そんなことできるわけがない」「そんなもの売れるわけがない」という否定的な意見が集まることが往々にしてあります。「ワークウェアスーツ」も開発当初は批判の声に晒されましたが、少しずつ市場において受け入れられるようになりました。商品やサービスのコンセプトを信じ、そのコンセプトが届いている顧客層に対してしっかりと向き合い続けることが重要なのかもしれません。同商品が、様々な場所で働く方々の「当たり前」になれるかどうか、今後の展開が楽しみです。