宣伝の予算ゼロの中、見出した答えはTwitter活用
――はじめに、岩谷マテリアル株式会社はどういった会社なのでしょうか?
中の人:合成樹脂と金属をベースとした多彩なマテリアル(原材料)を用いて、新しい商品やサービス、付加価値を提供している会社です。親会社はカセットコンロや水素を取り扱っている岩谷産業で、弊社はその子会社となります。
――『アイラップ』がどういった商品なのか教えてください。
中の人:高密度ポリエチレン製のマチ付きポリ袋です。数あるシリーズの中で今回話題になったのは「家庭用」として展開しているオレンジ色の三角形パッケージのものです。この商品は湯せんや電子レンジで食材の温めができる「袋のラップ」として、約40年前に開発されたものです。
『アイラップ』は今や、生活の一部に溶け込んでいます。そのため、一部地域ではポリ袋のこと自体を『アイラップ』と呼ぶ人がいたり、保育園や学校でも持ち物リストに『アイラップ』と表記されることもあります。販促物や運動会の景品、銀行の粗品としても利用されていると伺っています。
――どういった経緯で『アイラップ』は開発されたのでしょうか?
中の人:開発時の担当者は既に引退されているので、残念ながら詳細まではわかりません。ですが、ロール式ラップが広がりつつあった当時、ロール式ではできないことをやろうとしたのがきっかけだと聞いております。
――今回、なぜネット上で『アイラップ』が話題になったのでしょうか?
中の人:そもそも弊社は自社を商社と認識しており、商品の広告宣伝というものはこれまで行ってきませんでした。しかし、メーカー機能を有する企業として、宣伝活動は必要不可欠です。ただ、予算が組まれていたわけではありません。その中で目を付けたのがSNSを使った宣伝手法でした。Twitterでのツイートがきっかけとなり、話題を生むことができました。
――ネット上で話題になるよう、御社のほうから仕掛けたことはありましたか?
中の人:仕掛けたことは特にありません。きっかけは私のボヤきツイートでした(笑)。『アイラップ』は地域性が強く、新潟・山形・富山・石川・福井に売り上げの75%が集中している状況です。全国に流通しているのにもかかわらず、なかなか普及しないことをボヤくように投稿しました。
それが、既に普及している地域の方にとっては「全国区じゃないの!?」「『アイラップ』がない地区は普段一体何を使っているのか!?」という驚きになったそうです。逆に、まだ普及していない地域の方からは「『アイラップ』って何?」「初めて見た」「便利なの?」という声が集まり、そういった声が上がったこと自体が新たな驚きを生むといった流れとなりました。
まさに、「話題が話題を呼ぶ」ということが起きましたね。認知をある程度獲得した状態ではなく、数十年も商品名すら知られていなかったという事実が大きかったと思っています。