ファネルから「フライホイール」へ 新たな企業の成長戦略
会見の冒頭に登場したのは、HubSpotのCMOを務めるキップ・ボドナー氏。「CMOが話すことに関して不思議に思われるかもしれません」と前置きをした上で、企業の成長戦略における新しいフレームワークについて語った。
ボドナー氏は始めに、昨今の課題としてマーケティング担当者やセールス担当者の発信する情報への信頼度の低さを指摘。同社が行った調査によれば、買い手はビジネス色を感じさせる企業の情報よりも、医師や消防士といった中立的な立場にある人たちの情報を信用する傾向にある。また最近では、一般の個人から得られる口コミ情報が重要視されているという。
こうした背景から、ボドナー氏は「これまでのファネルの概念は、既にヒビが入っている状態になっています」と述べ、新たな成長戦略のフレームワークを提唱した。それが、「フライホイール」だ。
「フライホイール」は日本語で「弾み車」を意味するが、ビジネスにおいては、本質的な価値を提供することで顧客との間における「Attract(興味関心の獲得)」「Engage(信頼関係の構築)」「Delight(満足度の向上)」を達成し、顧客を推奨者(プロモーター)へと転換させていくフレームワークのことを指す。
インターネットが普及するまで、特に日本市場における成長戦略の中心は「Engage(信頼関係の構築)」の強化だった。つまり、セールス担当者が自らの足で営業をし、地道に信頼関係を築いていくというものだ。
それがインターネット普及後には、ネット広告や「コンテンツマーケティング」といった手法が広まり、マーケティング活動に注力する企業が増加。「Google Adwords」はその最たるものだという。
そして現在、ボドナー氏は、「顧客の喜びや満足感を醸成していく『Delight』が企業の成長の原動力になっていきます」と述べた。
フライホイールを回す原動力は?
では、「フライホイール」を回すための「Delight」を実現していくために、企業は何をしていくべきなのだろうか? ボドナー氏によれば、重要なのは「中心部分の摩擦をなくすこと」だという。
具体的には、顧客のニーズに応えた商品・サービスの提供だ。これまで多くの企業は、「商品・サービスは営業時間内でのみ提供する」といった、企業都合ともとれる活動を行ってきた。ボドナー氏曰く、これからは顧客が必要なときにいつでも商品やサービスの価値を享受できる「24時間サポート」など、顧客視点に立った体制の構築が求められる。
これまでのファネルにおける最終目標が「顧客の獲得」であったのに対し、「フライホイール」が目指すのは「顧客のプロモーター化」。顧客自らが企業を選んでいく、いわばインバウンド手法の考え方だ。これが実現できれば、セールス担当者やマーケティング担当者の業務は効率化し、企業の成長はよりスマートになっていく。
最後のページにはボドナー氏への単独インタビューの様子を掲載しています。
そちらも是非ご一読ください。