動画による態度変容への影響は?
動画活用を無視できないというのには、資生堂ジャパンの中條裕紀氏も賛同する。静止画のバナー広告、および認知目的と技術紹介の2つの動画広告でアプローチした際の「認知/興味/来店意向/購入意向」を調査したところ、グラフのようになったという。ここからわかるのは「生活者の環境的に、もうバナーだけでコミュニケーションを完結するのは難しい。何らかの動画を見せることで、態度変容に一定の影響があることはわかっている」と中條氏は解説する。

また、薬用美白スキンケアパウダー「Snow Beauty」の昨年のプロモーションを例に挙げ、人気俳優を起用したショートフィルムがSNSや店頭メディア、またパブリシティとして情報番組などにも多く取り上げられたことを紹介する。「生活者の情報環境として動画という形態が広がっている。また、動画だと情報が広がりやすいことは実感している」と中條氏。
一方、サブスクリプションのアプリサービスを展開するマネーフォワードの木村友彦氏は、同名の家計簿アプリでオリエンタルラジオを起用したテレビCMを展開したり、SNS広告を活用したりした経験から「我々のサービスは『理解してもらえないと使われない』という説明商材。そのために、テキストでくどくど言うより動画のほうがコミュニケーション速度が早いというメリットがある」と話す。
“主語の語り手”で、動画の効果は変わる
2つ目のテーマは「動画制作で気をつけているポイント」について。青木氏は、第一に「スタイル」と答える。「世界観を軸としたビジネスを展開しているので、品揃えなどより、活動のすべてにスタイルが一貫していることを重視している。動画も当然、それに該当する」と青木氏。
現在、クラシコムは自社の世界観を伝えるための実写のオリジナルドラマを展開しているが、その前段にはアニメも検討していたという。しかしメインユーザーである30~40代女性から「アニメは服が自分の好みと合わないから見ない」との声が。内容いかんではなく、自分たちのスタイルに合うかどうかが重要だと実感したそうだ。
中條氏は、“誰が”主語を語るのかという点を挙げる。商品についての印象や興味・購入意向などが、動画の伝え手が誰なのかによって大きく変わることは、実際に調査からわかっているそうだ。中條氏は一連の調査結果から、「世界観を伝えたいなら自社発信、スペックを伝えて購買意向を高めたいなら第三者的なメディアやインフルエンサーの客観視点。この使い分けが必要だと思っている。大事なのは、目的や伝え手によって内容を変えること」と話す。
さらに、木村氏は家計簿アプリという形態・内容の特徴から、目的、ターゲット、そして“どのレバーを引くか”という3つのポイントを紹介する。スタートアップのアプリ事業だけに、動画施策にもパフォーマンスを求められがちだが、「盛り込み過ぎにならないためにも、必ず目的をはっきりと言語化してチームで共有することが必要。10人が10人同じ解釈をするくらいのシートを作らないと、制作段階でずれていく」と指摘する。ターゲットを明確にし、動かしたい指標を練った上でそこに響くクリエイティブを当てるのが、現状のセオリーだという。