ユーザーインサイトをマーケの「上流」に反映するために
消費財のブランディングとマーケティングの経験をこれからフィンテック領域で発揮していこうとしているリュウ氏は、消費財から金融に転身し、周囲からは驚かれたという。だが、その分、全く違う業界で自身の経験をどう活かせるかが「自分の中では、今取り組みがいがあること」と話す。同時に、新商品を発案からリリースまで最短1日で実現できるという、金融商品ならではのスピード感にも関心を寄せる。
そんなリュウ氏は、今注目しているマーケティングの変化とその取り組みとして「ユーザーインサイトの発掘と、それを商品開発段階に活かすプロセスや仕組みづくり」を挙げる。

「マーケティングの要素は、本来、コンセプト開発や製品デザインにも入れるべき。今まではそうしてきたが、金融では、『商品はもうできていて明日ローンチ、さてマーケティングをどうするか』と相談されることが多い。ユーザーインサイトをつかみ、それをもっと上流で反映しようとしている」(リュウ氏)
また、サービスの発信者側と受け手側の間には、気づかず齟齬が起きていることもある。リュウ氏が直近で体感した例では、金融リテラシーのある人にとっては「日本株だけを持つのはリスク」というのは常識だが、10万円程度から投資できるFOLIOでターゲットとしている人には「海外株はリスク、日本株だけでいい」という認識が思いがけず大きかったという。「これを踏まえると、商品設計からコミュニケーションまで、我々のターゲットが理解できるように作る必要がある。まさに、今これを考えているところ」とリュウ氏。
出世を気にせず生活者を見つめる女性の視点

ここまでの話を振り返り、吉柳氏は「皆さんの姿勢は『プロダクトありきでマーケティングを考えるのではなく生活者の悩みやインサイトを起点に提案していく』ことが共通している。生活者の環境や暮らしを見つめ、そこにパートナーとしてプロダクトやサービスがあるという観点こそ、マーケティングで考えるべきことだろう」と話す。
続いて今回、まだまだ少ない女性CMOのみでセッションを展開していることに触れ「特に消費財は女性がターゲットであることが多いので、女性の視点が活かせるという文脈で女性マーケターの利点が語られることが多いが、どう考えているか」と問いかける。
これに対しリュウ氏は、「マーケターに関わらず、プロフェッショナルとして女性で働くことは、結果的に良かったなと思う。ポジションや出世を気にせず、本当にユーザーにとって正しいと思うこととストレートに向かっていけるから」と語る。自身の経験や周囲のケースからも、その強い思いがビジネスにつながり、役職についたという流れが少なくないそうだ。
また小和田氏は、マーケティング職で活躍する女性がなかなか増えないことについて、「当社でも大きな課題」と話す。前述の思いの強さに同意しながら、同時に「周囲に育ててもらった」という自身の実感をもって、貫く部分と結果を出すことの両方を重視することが大事だと話す。
「本人の努力だけではどうしようもないことも、たくさんある。その中で周りを味方につけ『あいつなら仕方ない、協力しよう』と応援してもらうには、やはり結果の積み重ねが求められると思う」(小和田氏)