自ら情報を獲りにいき、発信もできるようになった生活者には、かつてのような企業からの語り掛けは届かない。そんな中でも、成果を上げているマーケターは、何を重視しどのような施策へ転換しているのだろうか? アドテック東京2018において、CMOクラスの女性マーケターが集った、朝9時からのセッションには多くの参加者が来場し、現在進行形で変化する生活者との関係構築の仕方に耳を傾けていた。
今、マーケターとして最も重要視していること
気鋭マーケターの視点を学ぼうと、朝9時からのセッションには多くの参加者が集まった。そのテーマは「今、マーケターが考えるべきこと」。ベクトルグループの吉柳さおり氏をモデレーターに、ライオンの小和田みどり氏、アスクルの木村美代子氏、そしてFOLIOのリュウ シーチャウ氏と、いずれも実力のあるマーケティングのリーダーが、今最も重視していることを語り合った。

言わずもがな、長く生活者の要望に寄り添っているライオンと、顧客体験を重視した個人向け通販のLOHACOが好調なアスクル。P&Gやジョンソン・エンド・ジョンソンで手腕を発揮してきたリュウ氏は、フィンテックベンチャーのFOLIOにて、「VR」や「京都」といったテーマごとに気軽に投資できるサービスの市場開拓に取り組んでいる。
また吉柳氏は、複雑化し混沌とするマーケティング環境に触れ、「新しいソリューションやテクノロジーが出てきたからといって、どうにかなるわけではない」と課題を指摘。それを表すように、PR会社の印象が強いベクトルグループも、クライアントの課題にすべて内製で応えようとしてきた結果、「グループの事業会社は今46社に上っている」とグループの概況に言及する。
そんな彼女らが最初にセッションで挙げたトピックスは、「注目しているマーケティングのトレンドと取り組み」について。これに対しライオンの小和田氏は、「情報やモノに対して“ほしい”と思う気持ちが薄れている。その中でファンになってもらうのは、とても難しい」と語る。
そこでカギになるのは「顧客の課題をいかに速く知り、ブランドをどう掛け合わせるか」という視点だ。それを具現化した施策のひとつとして、小和田氏は、クリーニング業者と提携して着なくなった服を預かり、NANOXで洗浄して譲るという「トップ スーパーNANOX おさがりプロジェクト」を紹介する。
共感を得るためのカギを握るのは「デザイン」
プロジェクトの発端は、着なくなった服の処理に困っているという悩みだった。「子ども服を中心に、まだ着られるから捨てるのは忍びないという思いや、それをメルカリなどで売買している状況、またファストファッションの浸透で服を買うことが増えた一方で、“ミニマリスト”のようなブームで片付けに頭を抱える人々の姿があった。そこで、こうした悩みをブランドで解決できないかと考えた」と小和田氏。
実際に今年の8月末、テレビ番組のイベントとタッグを組み全国7ヵ所で服を回収したところ、「こうした取り組みをぜひ広げてほしい」という声が多く聞かれたという。ブランドが生活者に寄り添う姿勢から共感を得て、認知からファン育成につなげる考えだ。
続いて木村氏は、かつてのマスマーケティング・マスセールスに対し、LOHACOで生まれているECならではの多品種・中量販売という潮流を挙げ、「分散するニーズに細かく応えて“スモールマス”を生み出し、それを広げている」と話す。
その中でも特に注目しているのが、小和田氏も挙げた“共感”というキーワードだ。「共感マーケティングはとても重要だと捉えており、それを実現する手段としてデザインに力を入れている」と木村氏。LOHACOでは、2015年より「暮らしになじむデザイン」とのコンセプトの下、メーカー各社とコラボした商品開発・販売に取り組んでいる。通常、店頭販売用の商品パッケージは目立つために主張が強いことが多いが、このプロジェクトではデザイナー自身が「家に置きたい」という視点を重視して開発している。中には、通常版より少し高価格にも関わらず、7倍も売れた商品もあるという。
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- この記事の著者
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高島 知子(タカシマ トモコ)
フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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