カスタマージャーニーマップとペルソナの作成をフォーマット化
2つ目の鉄則は、カスタマージャーニーマップとペルソナの作成をフォーマット化し、誰でも使えるツールにしたことである。3Mはメーカーで、5万点以上も製品があることから、どうしても製品視点で営業やマーケティングをしてしまっていたという。

田中氏はそこを改め、顧客にスポットライトを当てるためにカスタマージャーニーマップを導入。顧客の意識変容プロセスを可視化することで、最適なマーケティング施策を行えるようになっていった。
カスタマージャーニーマップは、まずペルソナ開発から始める。必要なときはカスタマーインタビューも行ってターゲットの業務を洗い出し、目標達成に必要なことを見出す。その次にタッチポイントマップを作成する。ターゲットになりきってその行動を一覧にし、3Mが実際にやっていることとのギャップを見つけ出す。
そうすると、施策のアイデアが湧いてくる。そのあと、出てきたアイデアを絞り込み、その評価を行って優先順位をつける。実行の難易度とビジネスインパクトを考慮し、誰がいつまでに何をするのかを決めるのだ。
この過程で重要なのが、ワークショップをマーケティング部門の人だけで行わないこと。決裁者、営業部門、マーケティング部門、製品開発部門それぞれが顔を合わせて取り組む必要がある。ワークショップは自分事化の場であり、また合意形成の場でもあるからだ。何を、なぜやるのか。あるいは、何をやらないのか。それを関係者合意のもとで決めることが肝要である。
セールスとマーケティングのパートナーシップ
次の鉄則として挙げられたのは、営業(セールス)とマーケティングのパートナーシップ(SMP)。デマンドジェネレーションやリードナーチャリングを含め、リードマネジメントはMAとSFAが連携して全体を把握しなければならない。しかし、どの企業でも言われがちなのが、両者の仲がよくないこと。
営業部門はプロダクトアウトで、マーケティング部門はマーケットインという考え方の隔たりがあった。営業部門はまた、みずからが売上を作っているという自負があり、マーケティング部門との協業でメリットを感じたことが少ないのだという。
そこで田中氏が両者の連携、協業を促進するために作ったのがSMP Agreement。この協定をもとに、MAを推進していったそうだ。当然、社内マーケターの育成プログラムや、デジタルに慣れない世代に対して理解を促す啓蒙プログラムも欠かせない。
- どんなリードが必要か、営業から集める。
- それをMQLとして定義する(誰がいつまでに何をするか)
- リードをどう扱うか決める(放置されて溜まっていくのを避ける)
- デマンドジェネレーション活動の可視化と改善(作ったリードを活用する)

コミュニケーション課題を解決するソリューションコンテンツ
4つの鉄則の最後に紹介するのがソリューションコンテンツの作成についてだ。
3Mでは、顧客の課題を解決するというアプローチを重視している。製品や市場のことは話せても、顧客の課題は判然としない人は意外といるのではないだろうか。
しかし、今や顧客視点が常識となっている。スリーエム ジャパンではそうした課題を見つけては、動画を作成しているそうだ。動画で会社と顧客の間にある壁を取り払うのである。
たとえば、営業部門が製品を紹介する際の手順をビデオで説明する。あるいは、顧客内部にあるコミュニケーション課題にも踏み込んでコンテンツを作る。プロの俳優や声優を起用するのではなく、現場の人たちに出演し、語ってもらうことが大切だと田中氏は話す。
また、製品の写真を使用することが多いスリーエム ジャパンでは、わざわざ外注する手間を省くため、社内スタジオまで設立。写真撮影プログラムを構築し、誰でも自由に使用できるという。高品質な写真を低価格で撮影可能なため、その役割は大きいという。
今後解決すべき課題
講演の最後に、田中氏が今後解決すべき課題を挙げてくれた。
1つ目はABMの重視。スリーエム ジャパンではこれまで、午前と午後で別の営業担当が同じ見込み顧客にアポイントメントを取ってしまうようなことが頻発していた。明らかに社内で情報共有がなされていない証拠だが、それは営業担当が「自分の顧客、自分の売上」という意識が強かったからだったという。これを「3Mの顧客、3Mの売上」という考え方に変え、各顧客を中心としたマーケティングを行う必要がある。
2つ目は新規顧客の獲得。アウェアネスの向上はもちろん、WebページのSEOなど、3Mというブランドを新しい顧客層へアピールしていかなければならないと田中氏は強調した。
3つ目はより多くのソリューションコンテンツの開発。ターゲットや事業部ごとに共通フォーマットを開発し、動画コンテンツによって信頼性の向上を狙っているという。
4つ目はデジタルマーケターの教育。社内にキャリアパスがまだないため、教育プログラムと並行してマーケターとしてキャリアを集める筋道を作っていきたいとのことだ。
BtoBのビジネスは、ともすれば営業部門のガッツと足で成り立ってきた面が小さくはない。だが、そこにMAが登場し、景色を変えようとしている。現に、スリーエム ジャパンのように多くの企業で成果も出ている。田中氏の4つの鉄則を前提に、皆さんの会社でもMAを活用し、成功を生み出してもらいたい。