データ活用でテレビCMの効果測定を精緻なものに
2017年のPROGRAMMATIC I/Oでは、ユーザーの視聴環境の変化に追いつくためにはプログラマティックTVの仕組みが不可欠であり、これを実現するためのセルサイドとバイサイド双方の協力の必要性が訴えられていました。
2018年は「Spotlight:TV」と名付けれた専用トラックで、アドレッサブルTV(世帯レベルでターゲティング可能なテレビ)の具体的な活用事例がアドテク企業中心に紹介されました。
テレビCM効果のデータ分析を行う605の共同創立者兼社長のBen Tatta氏は、「How to Review the “Full Funnel” of TV Advertising」というセッションの中で、605のソリューションを活用したWalmartの事例を紹介しました。

Walmartは、同社のテレビCMがどのターゲットと最も親和性があり、かつ来店売上にどの程度インパクトがあったかを、605の独自手法であるIMPACT INDEXで計測しました。具体的には、ターゲットとの親和性はテレビCMの露出があった世帯へブランド好意度の調査を実施、来店売上リフトは世帯レベルでの広告露出データとWalmartの売上データを3rd Partyデータを介してマッチングさせる形で計測したとのことです。
この結果、ブランド好意度並びに来店売上の両方に関して、特定のターゲット内でリフトが顕著にあらわれたことから、このターゲットのリフトをさらに伸ばすため、テレビCM放映するネットワークや放映時間を24時間以内にプランニングする形でキャンペーンを最適化したところ、両指標で大幅なリフトが確認されたとのことです。
世帯レベルでのテレビCM露出データと3rd Partyデータの利用を可能にしているのが、605のデータパートナーの存在です。MVPD(Multi-channel Video Program Distributor:複数チャネルビデオ番組配信業者)大手のdishやCharter、MVPD関連会社のAT&T AdWorksやCOMCAST SPOTLIGHTからの視聴者データと、ExperianやLiveRampといったデータプロバイダーからの3rd Partyデータによって計測が可能となっています。

また、以下605のキャンペーンパフォーマンスダッシュボードの一部がスライドで紹介されましたが、ユニーク世帯リーチ数やテレビネットワーク毎のリーチ率、インプレッション数などの指標が確認できるかと思います。こういったダッシュボード上でパフォーマンスをモニタリングしながら、テレビCMの売り上げへのインパクトを定量的に計測することが、近い将来には当然のこととなっているかもしれません。

※Ben Tatta氏より本資料の引用について承諾を頂いております。
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テレビ保有世帯の半数以上がアドレッサブルに
テレビCMプラットフォームを提供するCADENTのCOO Jamie Power氏(以下Jamie氏)によるセッション「Best Practices For Addressable Advertising In Cross-Screen TV」では、アドレッサブルTVの今後の展望と効果測定の手法が紹介されました。

Jamie氏は、現在のテレビを取り巻く環境の複雑さを以下スライドでわかりやすく表現したうえで、この環境下で適切なオーディエンスにリーチするためにはMVPD等が取得可能な視聴データとデータプロバイダーが提供するオーディエンスのカテゴリーデータの掛け合わせが不可欠だといいます。

※Jamie Power氏より本資料の引用について承諾を頂いております。
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適切なオーディエンスにリーチするためのポイントのひとつとしてアドレッサブルTVであることがあげられますが、2018年現在はテレビ保有世帯の半数以上にあたる6,500万世帯のテレビがアドレッサブルTVであるといいます。2017年のPROGRAMMATIC I/Oにおいて、Coalition for Innovative Media Measurement(CIMM)のCEO Jane Clarke氏は、2018年のアドレッサブルTV保有世帯数を5,500万世帯と見込んでいたので、想定より速いペースでアドレッサブル化が進んでいることが伺えます。
一方で、インプレッションの定義やフリークエンシーキャップの設定可否など、セルサイドの指標並びに機能の標準化は発展途上の段階とのことですので、これらの標準化がすすめばアドレッサブルTVを対象としたキャンペーンの統合管理はしやすくなるでしょう。
テレビCMの効果測定に関しては、605のWalmartの事例同様に世帯レベルでの広告露出データと売上データを3rd Partyデータを介してマッチングさせる手法はもちろんのこと、ウェブサイト訪問への貢献を測定するために3rd Partyデータとピクセルをマッチングさせる手法、来店への貢献を測定するためにモバイルデバイスのIPアドレスとその持ち主が家にいた時間を掛け合わせる手法など、様々なケースが紹介されていました。
いずれの手法でも、ブランドリフト調査同様にテストグループとコントロールグループを分け、その2グループ間の差異をリフトとして測定するとのことです。アドレッサブルTVであるからこそ、テレビCMにおいても上記でご紹介した形でのリフト測定が可能になるわけで、このアドレッサブルであることのインパクトは計り知れないと感じました。