アナログ施策でリードを啓蒙し、課題を顕在化
4. 「自社認知なし・課題が潜在的」
最後は、「自社認知がなく、課題が潜在的な顧客」に対する施策だ。このステータスの顧客は、4象限の中で最も購買の見込みが薄い。「この領域こそデジタル施策」と考える人も多いかもしれない。しかし浅野氏は、「この領域にこそ、アナログ施策が必要です」と力強く語った。
浅野氏がそう力説した背景には、シャノンが過去に経験した失敗がある。これまで同社は、展示会を中心に見込み顧客のリードを獲得していた。年に2回イベントに出展し、約1万にのぼるリードをフォローしていたそうだ。
しかし、デジタルマーケティングの普及にともない、2016年にリアルイベントへの出展をすべて取り止め、デジタル施策中心に方向性をシフト。結果、Webサイトからの資料請求数が激増するなど、数字上には大きな変化が見られたという。その一方で、数字の変化に見合う受注が取れなかったそうだ。
初年度に続き、翌年も同じような状況に陥ったことを受け、浅野氏は失注につながった原因を分析した。その結果、「イベントを開催していなかった」ことが根本的な原因だったという結論に至った。というのも、競合企業はデジタル施策と並行して、セミナーなどのイベントを通して、「接触時間」を増やす施策、いわゆる啓蒙活動(ナーチャリング)を行っていたことが明らかになった。つまり、潜在的だった顧客の課題を顕在化する施策はすべて競合が行っており、「競合が作ったマーケット」で戦っていたことに気づいたという。
「特にBtoBの場合、課題への気づきを与えた企業に信頼が集まります。弊社のマーケティング施策は『刈り取り』としての資料請求を増やすだけで、顧客の態度変容に導くアナログ施策を打てていませんでした」(浅野氏)
アナログ施策に再注力した結果、受注数は約1.5倍に
こうしてシャノンは、再びアナログ施策にも注力。セミナーを定期的に開催し、外部イベントへの協賛も増やした。また、製品説明だけでなく、マーケティングに悩んでいる顧客に向けて解決策を提供するなど、啓蒙活動も積極的に行ったという。
これらと並行し、デジタル施策にも引き続き取り組むことで、デジタルとアナログを連動させたマーケティングを推進。結果、新規顧客獲得数は、アナログ施策に取り組んでいなかった1年前と比べて約1.5倍に伸びたという。
浅野氏は最後に、デジタルとアナログを連動させることで、マーケティングの効果最大化だけでなく、効率化も図ることができると述べた。そして、以下のようにセッションを締めくくった。
「BtoBマーケティングでは、キラーコンテンツとなるのは事例です。事例を量産する上で営業との協力は不可欠ですし、なかなか忙しい営業の協力を仰げない企業も多いでしょう。また、たとえ1年目で事例を含めたコンテンツ制作を頑張っても、それ以降『デジタル疲れ』をしてしまうことも多くあります。
そこで、デジタルとアナログを上手く連動させたマーケティング体制の構築が重要になってきます。この体制が整えば、具体的には、アナログ施策として取り組んだセミナーや展示会出展を開催レポートのようなデジタルコンテンツにし、それをもとにまた新たなアナログ施策への誘導に使うなど、1つの事例で『2度も3度もおいしい』一連の流れを作ることが可能です。
これによって、受注などの効果に貢献するだけでなく、より効率的にマーケティングを進めることができるようになります。また、結果が出れば営業の協力を得やすく、予算も取りやすくなります。こうした成功体験を生み出し続けることがマーケティングの成功、ひいては事業の成功につながります」(浅野氏)