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MarkeZine Day 2025 Retail

オムニチャネル戦略の成功&失敗事例から学ぶ「勝てる」マーケティング思考

データ収集を顧客と"共創"/丸亀製麺の公式アプリ施策に見るオムニチャネル戦略

「知覚価値」が「知覚リスク」を超える

 「顧客の手を借りる」という発想は、これまでありそうでなかった考えですね。我々人間は良くも悪くも、これまでの慣行に強く影響を受ける生き物です。デジタルのように新たな技術や手法がもたらす体験が出てくると、人はそれによって受ける恩恵である「知覚価値」と、逆に想定されるマイナス要素「知覚リスク」を天びんにかけます。その際に必要となるのは、「知覚価値」が「知覚リスク」を凌駕することです。

 ソーシャルイノベーターであり、ベストセラー書籍『シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略』(2010年、NHK出版)の著者でもある英レイチェル・ボッツマン氏は、このキャズムの越え方として、新著『TRUST 世界最先端の企業はいかに〈信頼〉を攻略したか』(2018年、日経BP社)において「信頼」の重要性を挙げています。

『TRUST 世界最先端の企業はいかに〈信頼〉を攻略したか』
レイチェル・ボッツマン著 日経BP社

 同書においてボッツマン氏は、新規のアイデアが受け入れられる過程には、信頼の積み重ねが大切であるとしています。詳しくは同書を実際に読んでいただきたいと思いますが、ボッツマン氏の表現を借りるならば、「それは何か?」「自分にとってどんな得になる?」「ほかに誰がやってる?」この3つの質問に答えられないと、新たなアイデア・サービスは世の中に普及していかないというのです。

顧客のメリットを伝播させていく

 たとえば、クレジットカードが普及し始めた当初は、「浪費を招きそう」という知覚リスクが「便利になりそう」という知覚価値を上回り、すぐには利用率が向上しませんでした。

 ところが、クレジットカードを使うメリットとして、「支払いを月末にまとめられる」「利用に応じてポイントが付与される」などがあることを理解し始めた消費者が、次第にクレジットカードを所有することをステータスとして受け入れていきました。そして、テレビCMなどを用いた訴求によって「クレジットカードを使いこなすことがスマートなライフスタイルである」という考えが浸透し、「じゃあ私も使ってみよう」と利用が広がっていきました。

 上記で言及している通り、丸亀製麺の公式アプリで特筆すべき点のひとつは、「良かったらレシートをスキャンしてくださいね」と、今となっては当たり前になりつつあり、かつ多くの人にとって難しくない「QRコードをスキャンする」という行為によって、顧客にメリットを提供していることです。これまでも存在したレシートという紙媒体を活用しつつ、新たな顧客接点を提示・提供している点が特徴的ですね。

 レシートのQRコードスキャンもクレジットカードと同様に、いずれ「知覚価値」が「知覚リスク」を上回り、その行為が当たり前となっていくでしょう。そして、利用することで得られるメリットを理解したり、多くの人が同様の行為を行っている様を目にしたりすることで、群集心理的状態(人が集まることで他の人たちにも影響を与え、同調圧力が生まれる状態)が形成されていきます。こうして、新しい顧客とのつながりやビジネスの種が生まれていくのです。

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「効率化」に終始しない体験を創出

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この記事の著者

奥谷 孝司(オクタニ タカシ)

オイシックス・ラ・大地株式会社 専門役員COCO(Chief Omni-Channel Officer)
株式会社顧客時間 共同CEO 取締役
株式会社イー・ロジット 社外取締役
株式会社Engagement Commerce Lab. 代表取締役

1997年良品計画入社。3年の店舗経験の後、取引先の商社に出向しドイツ駐在。家具、雑貨関連の商品開発や貿易業務に従事。帰国後、海外のプロダクトデザイナーとのコラボレーションを手掛ける「Worl...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/01/22 07:00 https://markezine.jp/article/detail/29905

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