クリックだけが価値ではない、動画広告の評価方法
――ますます需要が高まる動画コンテンツですが、ユーザーの利用傾向にはどういった変化が生じているのでしょうか。
須藤:いまやモバイルトラフィックでは、動画が顕著に伸びており、2021年には約8割を占めると言われています。SNSなど短いテキストを読むことが多い若い層が、どんどん長文を読まなくなる傾向があり、長い文章のコンテンツは離脱率が高くなりがちです。海外のデータではシニア層も動画をよく見ていて、シニアの活字離れも危惧されていると一部では言われはじめているそうです。情報量の多い内容も、再生すれば受動的に閲覧できる動画であれば見やすいという兆候が現れはじめているのではないでしょうか。
以前のインターネットは、検索して能動的に見ていくものでしたが、YouTubeやTikTokなど関連動画が自動的に次々と流れるメディアが増えてきたことで、動画を受動的に見られるようになりました。基本的に人間は楽な方へいくものなので、この流れはしばらく続くと思いますね。
――動画広告の成果というのは、どのように判断していけばよいでしょうか。
須藤:ビュースルーコンバージョン、つまり見たときにはクリックしないけれど気にはなっていて、後で検索するような間接的効果をきちんと扱うことが重要です。たとえばYouTubeで目当ての動画を今見たいと思ったときに、その前に流れる動画広告が気になったとしても、すぐにクリックして情報を見に行ったりしないですよね。ビュースルーコンバージョンを追うことで、PCDAサイクルを回す際に、どんなクリエイティブが響いたかなどのデータが取りやすくなってきます。
動画の効果の半分はクリエイティブで決まる
――動画広告が隆盛となっているなか、クリエイティブの消耗時間が短くなっていると言われていますが、ユーザーを飽きさせず見てもらうためには何が必要でしょうか。
須藤:大前提として、「クリエイティブがもはや消耗品になっている」ことは認めた方がいいです。飽きられるスピードがすごく速くなってきているので、どんなクリエイティブでも、ある程度フリークエンシーが上がっていくと、どこかの段階で必ず効果が下降していきます。そうならないためには、再編集して少しずつ変化させるなど、クリエイティブをどんどん新しくしていく必要があります。
テレビCMを再編集して動画に使う場合などは、出演するタレントの事務所やCM監督らの事前確認が必要な場合があります。そうなると短期間に複数パターンのクリエイティブを作り変えるのは難しくなるので、最近では広告主が発注する段階で、のちに動画素材として使う前提でオファーされることが増えてきました。CM自体も編集点をたくさん設けるなど、あらかじめ再編集しやすいように作られるようになってきています。
――クリエイティブを短期間で新しくしていくことで、広告効果はどれくらい違ってくるものでしょうか。
須藤:弊社でもクリエイティブを頻繁に変え、PDCAサイクルを高速化することでどれだけ成果が違うかを実際に試してきました。これまでお手伝いした仕事の手応えでいうと、出稿予算全体の中で10〜20%はクリエイティブのための投資にしていただき、PDCAサイクルを高速化させていくと、CPAやCPI、ROIなど顧客のキャンペーンの最終成果で30〜200%くらい広告効果が改善されました。
今までは広告の露出量をいかに増やすかということに注力されがちでしたが、クリエイティブにきちんと投資をすることが重要だということです。YouTubeから公表されているデータでも、動画広告の効果のうちクリエイティブが50%を占めると書かれています。もちろん商品やスペックといった情報は大事なのですが、半分はクリエイティブが影響します。