価格競争から店舗での価値提供へ
――冒頭で御社が考える「顧客体験」について伺いましたが、外食産業における「顧客体験」はどのように変容していると考えていますか?
竹中:これまでは、どちらかと言うと価格競争が中心になっていたように思います。たとえば、割引クーポンを大量に配る、などがそれにあたります。スシローの店舗の多くは郊外のロードサイドにありますので、お客様に”わざわざ”足を運んでいただく必要があります。
我々の競合は、同業他社の回転寿司チェーンにとどまらず、ファミリーレストランや食堂、ファーストフード店など多岐にわたります。その中でスシローを選んでもらうためには、価格や商品の質だけでなく、「お客様がスシローを利用する」という体験をいかに良質な内容で設計し、推進・運用できるかが重要になると考えています。
――デジタルを活用した集客への取り組みとしては、やはりアプリ施策に今後も注力していくのでしょうか?
竹中:アプリが大きな役割を担っていることに間違いはないと思いますが、アプリだけで完結することはないと思います。確かに、アプリを活用することでお客様の利用頻度をはじめとする様々なデータが得られます。また、アプリユーザーへのプッシュ通知など、お客様への情報提供についてはアプリに頼るところが大きいです。
一方で、スシローではテレビCMも継続的に展開しています。外食産業では、まだこうしたオフライン施策が主流です。オフライン×オンラインの施策でより多くのお客様にご利用いただくために、今も試行錯誤しながら様々な取り組みを行っているところです。
ただ、アプリの利用者が増えたとしても、そのまま売り上げの増加にはつながりません。というのも、店舗ごとの座席数は決まっていますので、先ほどお話ししたようなアイドルタイムへの送客などピーク時以外での来店を促し、集客につなげるのがひとつの手立てだと思います。
店舗設計にも発想の転換が必要
――時間帯や客層も考えた店舗の設計が求められるということですね。
竹中:これまでのスシローは、郊外のロードサイドに出店することが多かったのですが、今後は都心エリアにも出店を増やしていく計画をしています。お客様の行動変化や地域ごとの人口動態なども加味して、それぞれに適した店舗の出店をしていくつもりです。
――最後に、今後の展望について伺えますか?
竹中:より多くのお客様に、より多くのシーンでスシローを利用してもらいたいと思っています。現在は寿司居酒屋「鮨・酒・肴 杉玉」という新業態の店舗も展開しています。今後も様々なシーン・場所・シチュエーションでお寿司を楽しんでもらえるサービスを提供していきたいと思います。
――どうもありがとうございました。