食における顧客体験は「美味しさ」
――はじめに、竹中さんの現在の担当領域を教えてください。
竹中:現在は、スシローグローバルホールディングス(以下、スシロー)の経営企画部に所属しています。キャリアで言うと、スシローは4社目になります。大学卒業後、OA機器の新規開拓営業をまず経験し、そこから15年弱総合通販のニッセンでマーケティングやデジタル領域の業務を担当。その後、建築資材メーカーにてオンライン・オフラインを含めたマーケティングおよび販売促進の管理職を経て現在に至ります。スシローでは5年目になります。
今の業務は、CRMの推進がメインです。アプリを活用し、店舗来店やテイクアウト利用に応じたポイントプログラムを構築・運用していますが、昨今の顧客体験を考えていく中でオンラインとオフラインを切り分けて考えることは難しくなっています。そのため、双方の良い部分を取り入れ、より多くのお客様がスシローをご利用いただけるような仕組みを日々考えています。
――早速ですが、御社では「顧客体験」をどのように定義されていますか?
竹中:スシローの企業理念に、「うまいすしを、腹一杯。うまいすしで、心も一杯。」というものがあります。私は、外食業界においては、まずは何よりも美味しいものを届けることが一番の「顧客体験」になると考えています。
ただ、お客様が「食べる」行為に至るまでには、店内外問わず様々な「顧客体験」があります。スシローでは、大きく「来店前・中・後」と3つのタッチポイントを設定し、それぞれのフェーズでより良いサービスが提供できるように施策を検討し展開しています。
アプリをはじめとする施策で体験価値を向上
――それぞれのフェーズにおける具体的な施策を伺えますか?
竹中:まず、来店前のフェーズでは、アプリを使用して店舗の来店予約や持ち帰りの注文ができるようにしています。これまでですと、お客様は来店時に発券機で番号チケットを取得し、順番にお待ちいただく必要がありました。アプリを開発した現在では、店舗に来る前から順番待ちのチケットを発券することが可能です。待ち時間の長さからくるお客様の不満も解消し、店内でお待ちいただく時間の削減にもつながっています。
また、アプリからお持ち帰りの注文ができるようにもしました。これによって、ご注文されるお客様の好きな日時や引き取るお店が指定できます。事前に決済も完了しているため、お客様は来店時に注文した商品を引き取るだけでいい。お持ち帰りの注文にアプリを利用していただくお客様も、徐々に増えてきています。
次に来店中(店舗内)のフェーズですが、具体的な施策として、スシローでは特にレジ周辺の混雑緩和のために一部店舗でセルフレジを導入し始めています。ピーク時はお会計待ちのお客様、来店のご案内待ちのお客様、そしてお持ち帰り用のお寿司を待っているお客様がレジ前の空間に集中するため、大変混雑します。セルフレジを導入することでこのレジ渋滞をなくし、ご来店いただいたお客様に最後までご満足いただけるように取り組んでいます。決済においても、QRコード決済への対応を進めているところです。
それ以外にも様々なテクノロジー活用を進めてはいますが、個人的には店舗を完全無人化にすることは難しいと思っています。先ほど申し上げた通り、今の業態では店舗スタッフがお客様と接する機会があり、そのため数多くのオペレーションを習得する必要があります。テクノロジーは、少しでもこのオペレーションにかかる時間を削減し、店舗スタッフが接客に注力できるよう支援するものだと捉えています。
――最後に、来店後のフェーズについてはどうでしょうか?
竹中:来店だけではないんですが、アプリを利用してご来店いただくか、お持ち帰りの注文でネットを利用していただいた時に、「まいどポイント」を付与するポイントプログラムを展開しています。利用回数に応じた特典をお客様にプレゼントすることで、スシローの再利用の促進と離脱の防止につなげています。
――アプリの利用者はどのくらいの規模なのでしょうか?
竹中:2018年12月末時点で、ダウンロード数の累計は約1,100万。MAU(月間アクティブユーザー数)は約478万人になります。また、先ほどのポイントプログラムの会員は約240万人です。