答えはシンプル、イタコになること
独自性×便益。この主張に対して足立氏も大きく賛同。「怪盗ナゲッツ」「裏メニュー」「ヘーホンホヘホハイ」など、これまで足立氏はマクドナルド時代に数々の話題化したキャンペーンを手掛けたことで有名だが「話題化だけでは売れない」(足立氏)と断言する。
「まず前提としてポジティブな話題にならないと、まったく売れません。買って頂く理由が必要なのです。一方で話題化だけでも売れません。独自性があると話題化されやすいですし、ノウハウもあるので話題化は比較的簡単なのですが、同時に便益がないと売上にはつながりません」(足立氏)。
続いて女性消費者の捉え方について話題が発展。どうすれば女性消費者を捉えられるのか? その問いに対して足立氏の答えはシンプルだ。

「答えはシンプル。イタコになることです。お客様が見ているもの、考えていることを実際に自分が体験するのです。たとえば中年男性であれば朝起きて、まず日経新聞を見る方が多いと思いますが、同時にスマートニュースのトップやツイッターのトレンドを覗いてみましょう。まったく違う情報のはずです。自分とは全然違う世界をお客様は見ている。この現実を受け入れ、ギャップを知ることがまず大切。どんなものを見ているのか、毎日チェックするだけでも意識が変わってくると思います。意識的にエクササイズしてみましょう」(足立氏)
こうした考えを足立氏がもつに至ったきっかけは、P&G時代に紙おむつの担当になったことに由来するようだ。担当になった初日に実際におむつを履き、寝っ転がって尿をするという行為を体験。お客様と同じ体験をすることからスタートしたという。その原体験が、足立氏のマーケターとしての骨格を作ったわけだ。
お客様視点不在の意思決定は失敗のもと
一方で自身がお客様になりきれない場合は、どうすればいいのだろうか。この問いに対しても足立氏の答えはシンプルだ。「自身が判断できないのなら任せるしかない」(足立氏)。
その答えに対して西口氏は賛同しつつも「非常に勇気がいる行為」という見解を示し、任せる人をどうやって選ぶのか? と足立氏に問いかけた。
「たとえば、エージェンシーさんの提案でも女性視点と言いつつ、実際の提案は中年のおじさんばかりが作っているというケースが現実にあります。お客様視点が不在で、良い案が生まれるわけはないので、ターゲットと同じ感覚の方にお願いしたいと希望を出して、提案ごとに良し悪しを見て判断するしかない。部下についても同様で、お客様になりきってくださいとしつこく言いつづけるしかない」(足立氏)
足立氏があくまでこだわるのは「お客様視点」だが、言うは易く行うは難し。お客様視点不在で、視野狭窄に陥りがちなマーケターに対して次のようなアドバイスも贈った。
「地域も重要なポイント。東京で流行っていることが地方で流行っているわけではない。たとえば糖質制限。東京の一部では流行っていますが、新潟へ行けば皆さん白飯を食べてますよ(笑)。東京で流行っているからといって、日本全国で流行っていると思うのは錯覚です。これもお客様視点が不在だから起こること。お客様になりきること、これが本当に重要なのです」(足立)
クロストーク後には、同社が展開する新テレビCMに出演中の美容家のIKKO氏やモデルの島袋聖南氏が登壇し、自身が登録しているおすすめチャンネルの紹介やユーザーにとっての良質は情報は何かなどが語られ会場は賑わった。
