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西口一希と考えるマーケティング視点の経営

「上の世代を見ちゃだめ、下の世代に注目すべし」スマニュー西口×電通デジタル有園の平成振り返り対談

顧客インサイトと「ユニチョコ」

有園:たとえば2004~05年にユニクロを担当していたんですが、年間でCVRがいちばん低い日が同じ日だったんですよ。元々アパレルは「2・8(ニッパチ)」といって2月8月は下がるんですが、2年とも、ピンポイントで2月13日が低かった。

西口:おもしろい。バレンタインの前日ですか。

有園:そう。そもそも2月中旬は、冬物セールが落ち着くけど春物はまだという谷間ではあるんですが、私の仮説では「皆がバレンタインにお金を使い、ユニクロには使わない」んじゃないかと。

 もしそうなら、バレンタインにユニクロのTシャツは買わないから、Tシャツ型のチョコレートを売り出したらいいのでは、と考えて提案したんです。……食品は扱わないということで、採用されませんでしたが。

西口:え、すごくいいのに(笑)。先ほどの話にも通じますが、デジタルで可視化している行動データからインサイトを深堀りすると、昔の想像や勘よりもずっと確度を上げられますよね。ちなみに、そういう提案はよくされていたんですか?

有園:そうですね、今はもうほとんどしていませんが、現場で運用型広告を扱っていたときはA4ドキュメント1枚で毎週レポーティングをしていました。イシュー、バックグラウンド、レスポンス、プロポーザルをパターン化して。

 先ほどの例だと、2年連続で2月13日のCVRがいちばん低い(イシュー)、その背景はこうじゃないか(バックグラウンド)、じゃあ在庫なし商品の検索キーワードなどはストップして(レスポンス)、提案としては「ユニチョコ」はどうか(プロポーザル)と。これ、何も提案が書けない週もありましたし、すごく大変でしたが、自分の力になったのは確かですね。

Googleが生み出したパラレルワールド

西口:確かに、それを毎週やるのは大変だったと思います。でも、それで想像力が養われる。せっかくデジタルという武器があるんだから、デジタルの指標の裏側にある心理状態を把握できたら、昔のマーケターよりずっと力を発揮できるんじゃないかと思うんです。

 メディアや広告だって、ものすごく選択肢が広いですよね。たとえばネット広告は、いわゆる“枠”としてのマス広告とは全然違う。僕がGoogleで何かを検索したときの広告と、有園さんが同じことを検索したときの広告が同じじゃないという世界は、昔だと考えられないことだと思います。

有園:それに関しては、私がGoogleに入った年に、ボブというスタッフに力説されまして。

西口:(笑)。

有園:たまたまカフェで会って、入ったばかりなんだよと雑談をしたら「Googleは何が違うか知ってるか?! オレが教えてやる!」と(笑)。

 要するにGoogleは、個人の行動によって広告が掲載されるかどうかもわからないような、非常に確率的で多次元的な世界をつくり出したわけですよね。かつ、それは今指摘されたように、人によって違うものを見ている、パラレルワールドなんです。

 その発展形で今、たとえば湿度が一定以下になると特定層の人に保湿クリームが売れるから、“湿度連動型バナー広告”を実際に私がプランニングしていたりしている。だから何が言いたいかというと、コミュニケーション手段が多次元だからこそ、マーケターはそういうミクロではなく経済サイクルを見るようなマクロ視点ももっていないといけない時代だな……と思うんです。

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経済と景気と行動心理学の重要性

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この記事の著者

西口 一希(ニシグチ カズキ)

大阪大学経済学部卒業、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)マーケティング本部に入社。ブランドマネージャー、マーケティングディレクターを歴任。ロート製薬 執行役員マーケティング本部長として「肌ラボ」「Obagi」「メラノCC」「デオウ」「ロート目薬」などの60以上のブランドを統括。ロクシタンジャポン代表...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/03/08 08:00 https://markezine.jp/article/detail/30454

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