※本記事は、2019年3月25日刊行の定期誌『MarkeZine』39号に掲載したものです。
CESで見せたVerizonの「回帰宣言」
毎年1月に米ラスベガスで開催されているCES(Consumer Electronics Show)での注目キーワードは、予想どおり移動通信規格の「5G」が主流だった。本稿ではCESで話題だったキーワードよりも「語られなかったこと」に着目し、マーケティング業界における重要なシフトを紹介したい。
その顕著なシフトが現れたのが、米国携帯キャリア企業で最大手「Verizon」のハンス・ベストバーグ(Hans Vestberg)CEOの基調講演だ。一見、昨年の発表内容と大した変化がないように報道されているが、昨年と比較して「語られなかったこと」に着目すると、Verizonが「重みのある(価値の高い)データ」へ回帰宣言したことが見えてくる。
これまでVerizonは、「Yahoo!」と「AOL」という巨大マーケティング・プラットフォームを矢継ぎ早に買収し、累計約1兆円もの投下を行ってきた。しかし今回のCESでは、それらのビジネスを始め、それらに連動する「ユーザー・データ」ビジネスについては一切触れられていない。このVerizonの変化は、携帯キャリア会社として持ち得る「視聴行動」や「位置情報」を含めたユーザー・データを使ったビジネスの優先順位を、圧倒的に下げた(事業の柱からはずした)ということだ。