サブスク普及への大きな変化
日本はサブスクが受け入れられる土壌があったわけだが、近年の急成長には他の要因もあるだろう。筆者は1)モノからコト消費へのシフト、2)所有からシェアへの概念の変化、3)マーケティング費用を投下しやすいROIが高いビジネスモデル、4)テクノロジーの普及と進化、が関与していると考えている。
1)モノからコト消費へのシフト
現在は、“コト”消費の時代だと言われる。たとえば音楽も、レコードやCD という製品(モノ)を買うのではなく、「音楽を聴くコト」や「コンサートに行き感動するコト」という体験が重視される時代だ。コト消費は「原価が低く収益率が高い」ことが一つの利点。このように、レバレッジしやすいコト消費がサブスクを支えていることは間違いない。
実際に、音楽業界ではサブスクが進んでおり、楽曲を提供するレーベルのビジネスモデルにも変化が生まれてきている。ソニー・ミュージックレーベルズ部長の梶望氏は、「サブスクが進み、レーベルの戦いは『いかにCD を買ってもらうか』から『いかに聴いてもらうか』に変わってきている。また国内だけではなく、全世界で聴いてもらうことがより重要になってくる」と話してくれた。
2)所有からシェアへの概念の変化
コト消費が増えたとしても、決してモノがなくなるわけではない。しかしそのモノにも“所有からシェア”へという意識の変化が起きている。筆者はこの変化を掴んで大きく成長し、さらにこのトレンドを普及させた企業がメルカリではないかと考えている。
最近の若者はメルカリで売れる値段を見てから、商品を買うかどうかを決めることが多いということである。すなわちモノを買う際に、それを“所有”するのではなく、必要がなくなったら売る“利用価値”を見て行動しているということである。また、“新品”にこだわっていた商品、たとえば洋服や家具、嗜好品などに関しても他人が利用したものを躊躇なく受け入れ、また利用しなくなったら転売するシェア型消費が進んでいると言えるだろう。
3)マーケティング費用を投下しやすいROIが高いビジネスモデル
サブスクは一般的に原価が低く、継続期間が長いために顧客のROIが高く、顧客獲得のためのマーケティング費用が投下しやすい。一人の顧客の獲得にかけられる費用が多いということは、それだけ業界全体が発展する可能性があるということである。特にデータ活用を中心としたデジタルマーケティングは、特有のサービスに対しての顧客を見つける意味で大きな役割を果たすので、より活用が進むのではないだろうか。
4)テクノロジーの普及と進化
最後に、テクノロジーの進化も欠かせない。サブスクではないが、わかりやすい事例としてUberを例にあげる。Uberは、スマートフォンとアプリだけで誰でもタクシーの運転手になれる仕組みを開発し、ネット上でピックアップ場所と行き先を指定し、決済や運転手と顧客の相互評価までできるというものである。
筆者は、IoTの本質は「可視化」であると考えている。Uberは「タクシーを欲している顧客」「運転手になりうる車」「運行中の現在地」「行き先情報」「個人(運転手、顧客)評価」などを可視化している。また筆者はAIの本質は「効率化」であると考えている。Uberは車と乗客の需要と供給の最適化に必要な料金(ダイナミックプライシング)を計算し、最適な配車と経路案内をAIで提供しているのである。
サブスクの各種サービスもこのようなテクノロジーを利用して実現できているという側面が少なくない。たとえば家に住み放題や、車に乗り放題のサービスは決済や相互評価システムに加え、利用中の行動を監視する仕組み(カメラや音声スピーカーなど)にてサービスの安全な提供を担保していると言えるだろう。