休眠顧客を掘り起こすための広告配信
先述のように、アクティブコアのMAには、ディープラーニングで顧客の特徴を洗い出して、その特徴と類似する人の購入データからレコメンドするという独自のレコメンドエンジンが組み込まれている。これは、ECサイトの休眠顧客向け施策に有効だという。山田氏は、クライアント企業の実例を基に、具体的な施策と結果を次のように説明した。
「ECサイトの休眠顧客向け施策を行う際には、まず休眠顧客の特徴を分析することから始めます。以下は実際のクライアント企業の調査結果になります。具体的な金額は企業の商材やターゲット層によって変わってきますが、基本的に購入金額が少ないほど休眠顧客の割合が多くなることがわかっています」(山田氏)
また商材カテゴリーが複数あるショップの場合、単一カテゴリーでしか購入していない顧客よりも、複数カテゴリーで購入している顧客のほうが休眠顧客になりづらいという。
こうしたデータに基づいて、複数カテゴリーで購入した後に休眠化してしまった顧客に向けては、その人と類似のユーザーが購入したものをレコメンドする広告配信を行った。また単一カテゴリーで3,000円以下の購入の休眠顧客には、その人ごとにレコメンドした広告を配信。その結果、7.1%の顧客が再度購入に至ったという。
「これは広告配信の成果としては大変大きなものですし、ターゲットを絞ることで広告費用も抑えられます。データに基づいて顧客をセグメントすることが、マーケティングの成果を上げていくうえで大事だと言えるでしょう」(山田氏)
退会ユーザー予防のための施策
購入だけでなく、退会を防ぐためのマーケティングにも、データ活用は有効だ。アクティブコアは、退会の原因を探るため、クライアント企業のECサイト退会ユーザーの特徴を分析したという。
「退会ユーザーの特徴を分析・可視化したところ、『最後のサイトアクセスからの経過日数が多い』『最終購入日からの経過日数が多い』『累計購入金額が少ない』といった結果が出ました。また、退会前にWeb訪問する人が78.8%いたので、その方たちがどのページを閲覧したかを調べました。そこから、退会ユーザーの51.2%がお問い合わせTOPを、38.7%がよくある質問(FAQ)を見ていて、何か気になっていることがあることがわかりました。これらのデータから、退会しそうな顧客を予測していきます」(山田氏)
「FAQを見たけれど退会につながらなかった顧客が見ていたページや、行動パターンをAIに学習させ、退会が予想される顧客にそれらをレコメンド表示するという対策を行いました。それとあわせて、よくある質問のページにチャットを連携させ、すぐに質問をできるようにしました。こうして、顧客が持っている悩みやクレームに関する情報を探すことなく表示、問い合わせできるようにしました」(山田氏)
ここまでAIやMAの有用性を語ってきた山田氏だが、セッションの最後は次のような言葉で締めくくった。
「AIやMAはツールにすぎません。これまで属人的に手動で行ってき分析を、データ統合、分析、可視化することは得意です。しかし、実際にその施策を行うかという部分では、必ず人の判断が必要となります。あくまで分析等の作業をするためのツールと捉え、ジャッジは人がするものだと考えて活用していくと良いでしょう」(山田氏)