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MarkeZine Day 2019 Spring

NECのBtoBデジタルマーケティングの進化とABMの推進

 3月7日から8日にかけて行われた「MarkeZine Day 2019 Spring」。その最初を飾ったセッションの一つが日本電気(NEC)の東海林直子氏の「ABMを前提としたオウンドメディアによるデマンドジェネレーション戦略」であった。東海林氏は2004年から進めてきたNECのデジタルマーケティングの変遷を語った後、現在注力している取り組みについて解説した。

3つの変化に対応する必要性

 NECといえば「PCや携帯電話の会社」というイメージがまだまだ強いかもしれない。しかし、現在のNECでは認証技術、AI、IoTなどのBtoB事業が約9割の売り上げをもたらしている。また、2013年4月に発表した中期経営計画の中で掲げた「社会価値創造企業になる」というビジョンの実現に向けて、変革の只中にある。

日本電気株式会社 IMC本部 本部長代理 東海林直子氏
日本電気株式会社 IMC本部 本部長代理 東海林直子氏

 デジタルトランスフォーメーションをキーワードに、マーケティング活動を通して、新しい顧客に共創のパートナーとしてNECを選んでもらえるよう取り組みを進める中、東海林氏は、3つの変化に対応する必要性を痛感したという。

 第一に顧客の変化だ。従来のNECの主な顧客は企業のIT部門であったが、これからはあらゆる領域の事業部門にソリューションを提供しなくてはならない。その中にはNECをまったく知らない人がいる可能性もある。既存の会員データベースの中身はIT部門が中心であったが、これを事業部門中心のものに変える必要性があった。

 次に意思決定の方法が多様化。これまでのBtoB商材の購入プロセスは資料を見たり、展示会で話を聞いたりした後、営業に問い合わせをする流れであったが、このプロセスはデジタルに移った。そのため、営業からは事業部門がどんな情報収集をしているかがわからなくなっているのだ。営業に問い合わせをしてきた時には比較検討が終わっていることもありうる。高度な要求に応えるには、比較検討の段階から見込み客とコミュニケーションを取ることが必要になる。

 第三に情報収集方法も変化している。メルマガやWebサイトからSNS、展示会や自社だけでなく競合の営業などの様々なタッチポイントから情報を収集している。実際の意思決定プロセスを理解するには、多くのデータを収集し、どんなタッチポイントからでも一貫したコミュニケーションを取る必要がある。

オウンドメディアの会員データベースを使ったマーケティングの進化

 デジタルで環境が大きく変化する中、NECのマーケティング施策は、2016年からとそれ以前で大きく変化したことを東海林氏は解説する。NECは2004年からビジネス情報サイト『wisdom』の会員データを使い、メールマーケティングを行っている。今でこそオウンドメディアを立ち上げる企業は珍しくなくなったが、NECの名前を隠したサイトは当時としては異色の存在であった。

 当時の『wisdom』運営の目的は、営業が普段の活動ではリーチできない読者の情報を収集することにあった。この会員データを使い、NECの取り組みを伝えるメールを送り、反応の良かった見込み客にコールし、感触を確かめてから営業に渡すナーチャリングの仕組みを作ったのだ。

 しかしNECの扱う商材は多い。商品ごとにメールキャンペーンを展開するようになると、やればやるほど開封率が下がるという問題に直面した。設定条件が重なることが多く、中には月に40通ものメールを受け取っていた人もいたという。「送るメールの数を増やせばそれなりに効果があったので続けていたが、嫌がられることも多かったのではないか」と東海林氏は振り返る。

 このやり方を大きく変えたのが2016年のMA導入であった。「Oracle Eloqua」を導入し、スコアリングをしてから訴求内容と顧客課題がマッチする可能性が高いセグメントに対してターゲティングメールを送るように変えた。同時に『wisdom』自体もNEC運営であることを前面に出し、社会課題を解決するデジタルトランスフォーメーションやテクノロジートレンドに関する記事を掲載するようサイトを刷新した。

 それまでの『wisdom』では、英会話や歴史など、教養の分野の記事に力を入れており、読者からの人気が高かったため、編集方針の変化を嫌ったファンは離れることになったが、「会員データベースの中身を事業部門の人たちのデータでリフレッシュすることを優先したかった」と東海林氏は説明する。新しいNECのファンになってもらえる人が集まるメディアにしようと考え方を切り替えたという。

 「ナーチャリングキャンペーンのポイントは、ターゲット企業を明確にするABM(Account-Based Marketing)の考え方にある」と東海林氏は語る。マーケティングと営業が共有する会員データベースの中身を、同じターゲット企業であってもIT部門ではなく、営業がアプローチできていない事業部門の情報とし、この情報を基にターゲットの業務課題に適したメールを送るように変えたのだ。

 方法を変えた結果、MA導入以前のクリック率は平均1%程度であったが、平均10%にまで上昇したという。しかも一斉配信からターゲット企業を絞り込んで送るようにしたことで、以前よりもコストをかけずにキャンペーンを展開できるようになった。

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタントとして活動中。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/04/15 08:00 https://markezine.jp/article/detail/30727

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