インサイドセールスの強化で弾みを付けたABM
ABMの取り組みでは、MA導入と共にマーケティングと営業の間を取り持つインサイドセールスも強化した。東海林氏は「以前は、マーケティングから営業にリードを渡しても、フォローしてもらえなかったり、営業が訪問したのに商談につながらなかったりで、2つの組織の間には心理的距離があった」と振り返る。インサイドセールスにはこの間を埋める役割を期待した。
NECの場合、インサイドセールスの位置付けを営業寄りではなく、マーケティング寄りとしている。その理由は「NECの場合、マーケティングがインサイドセールスにリードを渡すとき、デジタル上の行動履歴情報を提供し、コール対応に役立ててもらうことを重視しているから」と東海林氏は説明する。
営業は顧客がデジタル上で何をしているかに深い関心を持たないが、インサイドセールスはリードを営業に渡すかどうかの判断や、すぐには訪問できない場合に顧客とリレーションを作るためのコールを行う際、マーケティングが渡すデジタル情報を必要とする。その代わり、インサイドセールスが営業にリードを渡すとき、コールで顧客が発言した内容や要望を伝えるようにした。

1ヵ月で3件の商談化に成功
これまでの営業のテリトリーは既存顧客と新規顧客の両方、扱う商材も既存と新規の両方であったが、営業は新しい商材の顧客開拓に集中できるように変化してきたという。これもインサイドセールスが既存商材を必要とする新規顧客の開拓に注力することで、余力ができたからだ。
営業自身の意識も変わった。ある営業担当者は、最近の商談は複雑化しており、一案件あたりの営業工数が増加する傾向にあることを指摘する。見込み客からの購入シグナルを捉えるには継続的な活動が必要になるが、リソースが限られる中では難しい。そのフォローができるのがマーケティングとインサイドセールスだ。組織連携による顧客情報の把握と関係構築の重要性が組織全体に浸透しつつある。
システムもMAとSFAを連携させた。MQL(Marketing Qualified Leads)の情報をマーケティング、インサイドセールス、営業で共有することができるようになったほか、セールスフォース・ドットコムの「Chatter」を使い、いつでもどこでも関係者同士のコミュニケーションを行うこともできるようになった。マーケティングからインサイドセールス、営業までのプロセスがつながったことで、KPIもMQLの量的達成だけでなく、後続のSAL(Sales Accepted Leads)やSQL(Sales Qualified Leads)に転換できたかの質も意識するようになったと東海林氏は評価する。

取り組みが実を結び、重点ユーザーだがこれまでは営業の接点のなかった物流部門へのアプローチを行ったケースでは、キャンペーンを開始してから1ヵ月で3件の商談化(SQLへの転換)に成功する例も出てきた。