文脈に合わせた発信に必要なこととは?
今回ご紹介した事例をもとに、エンゲージメント文脈に合わせて発信および便乗していくためのポイントを、発信する側と便乗する側に分けて解説したいと思います。まずは発信する側から。
1.ブランドファンの形成
3つ目のケースにありましたが、発信する側にとって強いステークホルダーが多ければ多いほど、彼らは発信された情報を波及してくれるだけでなく、リサーチャーとして「新たな文脈」に気づいてくれます。そのため、エンゲージメントの高いブランドファンを形成していくことが、発信する側の企業には求められます。
2.「便乗しやすい」環境作り
冒頭で紹介したランキングの中でも、首相官邸や安倍首相のアカウントからの発信に絞ると、エンゲージメント数は100万前後に留まります。令和全体でここまで話題になっているのは、明らかに二次創作も含めた「便乗」が起きているからです。
企業視点で見ると、ここでの「便乗」は言わばUGC(User Generated Contents)です。企業が発信する情報を広く波及させるには、発信する情報にイジりやすい余白をあえて残したり、便乗する側が準備できるように事前予告をしたりすることでUGCの制作を促すことが求められます。広告業界では、従来のティザー広告という手法もありますが、このあたりの役割や仕掛け方も工夫できると思います。
便乗に必要なのは予測とスピード感
続いて、エンゲージメントしそうな文脈に便乗する上で必要なポイントも2つご紹介します。
1.便乗すべき対象の予測
情報があふれかえり、日々大量の情報がスルーされている現代において、自社が常に仕掛けを用意し発信するだけで情報を届けるのには、限界があります。広告でリーチ量を担保するにしても莫大なコストがかかります。そのため、いかに世の中でエンゲージメントされている文脈に便乗できるかが、重要になってくると思います。
さらにその文脈の移り変わりも早いため、いかに事前予測できるかが求められます。その中で、新元号の発表はわかりやすい事例となりました。こういった事前予測が可能なチャンスは今後もありますし、新元号の発表のようにわかりやすいイベントでなくても、過去にさかのぼってシーズナル単位で予測を立てることも可能かもしれません。
2.スピード感の担保
便乗する際はとにかく「スピードが命」です。新元号がホットな話題だったのは、当然4月1日です。そこをいち早く予測し、対応できるかがポイントでした。対応の仕方によっては、事前準備の時間を確保することが求められるでしょう。
ゴールデンボンバーが発表した新元号ソングは、徹底した事前準備もさることながら、当日の発表に至るまでの作業工程が明確化されていたはずです。ここまで含めた予測ができると、リアルタイムに世の中のエンゲージメントの波に歓迎される事例が増えてくるはずです。
今回ご紹介した事例はあくまでエンゲージメント上位の事象を切り取った内容に過ぎません。「令和」全体としては3,200万を超えるエンゲージメント総数だったため、この他にも興味深い事象が発生しています。
2020年には東京五輪という、かつてないほどのエンゲージメントの大波が来ます。これからの戦略策定において、ぜひ参考にしてみてください。