2018年の最新調査結果/高まるアドベリフィケーションリスク
MarkeZine編集部(以下、MZ):ここ数年、ネット広告の健全性についての意識が高まっています。業界内でアドベリフィケーションやアドフラウドという言葉も一般的になってきましたが、あらためて日本の現状について教えてください。
高田:近年における課題の顕在化に鑑み、電通デジタルは2017年10月に「アドベリフィケーション推進協議会」を発足しています。現時点での加盟社は、電通、セプテーニ、モメンタム、インテグラル・アド・サイエンス、MOAT、サイバー・コミュニケーションズ、DAサーチ&リンクの8社になります。同協議会では、日本の広告市場におけるアドベリフィケーションの現状を調査したレポートを定期的に発表していますが、残念ながら大幅に改善したという結果は出ていません。
高頭:2017年度のレポートでは、日本国内のプログラマティック広告取引におけるアドフラウドの割合は9.1%、ブランド毀損リスクは11.2%でした(数値はモメンタム調査)。
そこから1年経って、2018年の調査では、対策をしている広告配信プラットフォームか否かによって、アドフラウドリスクに関しては大きく差が出る結果となっています。一方でブランド毀損リスクに関しては、依然高い状況と言えます。
ブランド棄損リスクやアドフラウドリスクが高いカテゴリとは?
高頭:今回は特定のメディアのみに配信している広告配信プラットフォームは除外して、一般的なアドネットワークやDSP、SSPに限定して調査しました。
「代表的なブランドリスクのあるメディアのカテゴリ」を見ると、「ポイントサイト」や「匿名掲示板」のリスクの高さが明らかになりました。「匿名掲示板」のリスクが高い理由は、日本にブログ文化が根付いていることもあり、ユーザー投稿型サイト、いわゆるCGM(Consumer Generated Media)が多く、そのためヘイトコンテンツやアダルトコンテンツが多いからです。一方で、昨年の「漫画村」問題を契機に、著作権侵害に関するWebサイトへの意識が高まったこともあり、「著作権侵害コンテンツ」のカテゴリに関しては前回よりもリスクが下がっています。
高田:アドフラウドリスクをみると、広告配信プラットフォームごとの差が顕著に出ていますね。ここにはアドフラウド対策に取り組んでいるプラットフォームと、そうでないプラットフォームの差が歴然と現れています。
MZ:アドフラウドをはじめ、ネット広告の健全性への関心度が高まっているにも関わらず、なぜ対策に取り組んでいない広告配信プラットフォームがいまだに多いのでしょうか。
高田:一部の広告主が許容しているという現状がいまだにあるからでしょう。多少アドフラウドが発生しても、費用対効果が見合うので出稿してしまう企業が、現実としては存在するのです。ただ、アドフラウドが起きているWebサイトは、ブランド毀損するものとニアリーイコールである場合が非常に多いので、これはとても危険な行為です。
電通グループは、運用広告のリスクを把握し、クライアント企業の承諾のもとで最大限リスクをコントロールするための行動指針として「Clear Code(クリア・コード)」を掲げ、アドベリフィケーション諸問題に対する対応戦略を四段階に分けてフレームワーク化しています(下図参照)。これに基づき、クライアント企業への安全策やソリューションの提案を行っています。
MZ:アドベリフィケーション対策に真摯に向き合っている広告会社や広告配信プラットフォームが簡単にわかる状態になると、広告主にとってはありがたいですよね。
高頭:おっしゃる通りです。先日、モメンタムではアドベリフィケーション対策に積極的に取り組む企業を認定する制度「Platform Certification Program(PCP)」を開始しました。広告配信プラットフォームがきちんとアドベリフィケーション対策をしているかを広告主側で調べるには限界があるので、こういった認定制度が指標となり、役立つと思います。