アドベリフィケーション対策のコストは誰が負担すべきか
MZ:ブランドセーフティやアドフラウド対策のコストやリソースを、誰が負担すべきかとよく議論に上がりますが、お二方はどのようにお考えでしょうか。
高田:前提として、アドフラウドはゼロにすることはできません。運用型広告の仕組みと特性、それにともなうリスクとリターンを理解した上で、活用に向き合うべきです。もちろん、当社も広告会社としてできる限りの対策を行っていますが、限りなくゼロに近づけていくためには、広告主の協力が必要です。
高頭:アドベリフィケーションツールを提供する立場として、私たちがいちばん責任をもって課題解決に取り組むべきだと考えています。ツールベンダー、広告会社、広告主、プラットフォーム、そして消費者。すべてのステークホルダーは数珠のようにつながっています。消費者にしわ寄せが行かないように、私たち、企業が手を取り合って解決していくべきでしょう。
高田:一方で、本当にリスクを限りなくゼロにしたいのであれば、運用型広告ではなく予約型広告を選択するのが最適な手段でしょう。それでも効率を重視して運用型広告の活用を選択するのであれば、それ相応のリスクがともなうと事前に説明をするようにしています。
デジタル広告施策において、ブランドセーフティの観点を含めたKPIが設定されているところはほとんどありません。なので、既存のKPI以外の視点を提供しなければいけません。最終的にジャッジするのは広告主ですので、正しく判断できるようにサポートするのが私たちの役割だと思っています。

MZ:最後に、両社が見据える今後の展望を聞かせてください。
高頭:これは弊社の創業時からの理念ですが、アドフラウドのような不正行為を行い、広告収入を得ている悪質な事業者が、存在している状況は許せるものではありません。難しいことは承知しているのですが、アドフラウド問題は絶対にゼロにしなければいけない。そのためには、電通デジタルさんのようなパートナーと協力しながら、広告業界の健全化へ向けて歩みを進めていきます。
高田:広告に関わるすべての人の意識を変えていきたいですね。まず広告主は、安かろう悪かろうという広告の発想をなくしていただきたいです。広告会社はできる限りアドフラウドなどのリスク回避を行うと同時に、適切なソリューションを提供するべきです。また、モメンタムさんのようなアドベリフィケーションツールを提供する会社は、技術力を軸に不正対策を推進します。DSPやアドネットワークなどのベンダーは、怪しいサイトを排除します。メディアは良質なコンテンツを作り、そして消費者は悪質なコンテンツを見ないようにします。
やはり、カギになるのは消費者の意識でしょう。そもそも漫画村を誰も見なければ、あれほど大きな問題にはなりませんでしたよね。そのためには、まずパブリッシャーが良質なコンテンツを作成する必要がありますし、良いWebサイトを維持するためには、良い広告配信プラットフォームで収益を維持できるようにしなければいけません。広告主も不正なWebサイトに広告費を流さず、良いWebサイトに配信できるようなプランを選択するべきです。このように、すべてのステークホルダーが少しずつ良い方向に変化できれば、業界全体の健全化につながるでしょう。