約8,000の企業が活用している運用型広告プラットフォーム
MarkeZine編集部(以下、MZ):まずは「LINE Ads Platform」(LAP)の特徴や現在の利用状況などについてお聞かせください。
池端:LINEは現在8,000万人と非常に多くのユーザーを抱えていて、月間のアクティブ率は86%とエンゲージの高いサービスとなっています。LINE Ads PlatformはそのLINEの中で運用型広告を出せる商品です。国内最大級のプラットフォームに、LINEが保有しているデータやセグメント情報を使ってプログラマティックに出稿できます。LINE Ads Platformを導入いただいたブランドや企業数は約8,000で、月間の利用社数は3,000〜4,000ほどになります。
池端:広告枠も特徴的で、タイムラインの他、LINE NEWS、LINE BLOG、LINEマンガ、LINEポイントと多くの配信面があります。トークルームの上にはスマートチャネルというコンテンツ枠があり、そこへの出稿も可能です。他社のインフィード広告ビジネスと大きく違うのは、法人向けアカウント「LINE公式アカウント」がサービスの主軸となっている点です。LINEの中で企業やブランドがLINE公式アカウントを持ち、友だちになったユーザーへメッセージを送れるという、シンボリックな商品です。そういったサービスとも、運用型の広告を連携することが可能です。たとえば、「LINE Ads Platform CPF(コストパーフレンド)」という、友だち追加を訴求する広告で、追加件数に応じて課金をしていくモデルも用意しています。
MZ:既に多くの企業が活用している一方、まだまだ伸びしろもありそうですね。
池端:抱えているユーザー基盤に対して、広告出稿においては多くのお客様を獲得しきれていないというのが正直なところです。現状、首都圏中心で、大企業が多いのですが、全国くまなく、中小企業から大企業まで満遍なく使っていただけたらと考えています。そのためには、あらゆる企業の潜在顧客であるユーザーがLINEの中にいるということを、改めて伝えていかなければいけないと思っています。
真摯に広告内容を伝えられた数だけをカウント
MZ:LINE Ads Platformのインプレッション定義が6月1日から変わりました。具体的には何がどう変更になったのでしょうか?
北出:今までは広告のクリエイティブ領域が1ピクセルでも表示されればインプレッションとしてカウントされていました。6月1日からは、広告のクリエイティブ領域が100%表示されて初めて1インプレッションとしてカウントされるという形に変わりました。
MZ:企業や代理店からそういった変更の要望があったのでしょうか?
池端:いえ、特にこれまでに要望があったわけではありません。
北出:主要なSNSのインフィード広告も1ピクセル表示でカウントされていることが多いので、ある意味それが当たり前でした。ただ、昨今はサードパーティのサービスを使ってビューアビリティを計測すべきという議論もあって。それならば、広告プラットフォームとしてインプレッションを100%でカウントするのが誠実ではないかと考えるようになりました。実際に広告主の皆さんへの還元価値という意味でいうと、きちんと広告が届けられなかったユーザー分のインプレッションが減るので、クリック率や、動画においては視聴完了率なども含めた数値も必ず上がります。その上で、ブランドリフトなどの数値にも良い影響が出ると思っています。
池端:広告主や代理店の皆さんに、インプレッション定義をこう変えますと説明をしに伺いましたが、「非常に誠実な対応ですね」「驚きました」というリアクションをいただきました。広告主の方にとっては使いやすくなるし、代理店の方からは胸を張ってご提案しやすくなると評価をいただいています。
MZ:他に今回変更される点はありますか?
北出:動画広告のレポートがより詳細になります。今まではインプレッション、インビュー、視聴完了の3つの項目でレポートを出していました。それが、インプレッション、3秒再生、25%再生、50%再生、75%再生、95%再生、視聴完了の7つの項目でレポートが出るようになります。
メリットを実感してもらい、利用数を伸ばす
MZ:広告主にとっては良い変更となっても、LINEとしてはインプレッション数が減れば収益も減りますよね?
北出:短期的には、一定量は減るでしょう。ダウンリスクも考慮し、かなり議論を重ねてこの結果にいたっています。ただ、広告主の皆さんにとってはメリットが大きいので、誠実に向き合っていれば、今後利用数は上がっていくだろうと考えています。まずは使っていただいて、今回の改善の成果を実感していただければと思います。
MZ:どのような経緯で、このような思い切った変更にいたったのでしょうか?
池端:実は1年くらい前から社内で議論を重ねてきました。もちろんそれまでは、その形が最適解であると考えてインプレッションの定義をしてきたわけですが、時代や環境の変化に合わせてもっと今に相応しい形があるのではないかと。ただ、LINE Ads Platform自体が2016年6月にスタートした歴史の浅いサービスですから、インプレッション定義の変更を判断するためのデータがあまりなかったのです。そのため、本格的に変更について詰めていったのは、昨年末あたりです。そして社内で数値の検証などを行い、実際に広告主の方にメリットがあることがデータでも検証され、やはり変えるべきだろうという結論にいたりました。全国大中小くまなく、企業の皆様に当たり前に使っていただけるプラットフォームになるためには、誠意を持って、そうするべきだと考えました。
北出:LINEの広告サービスを使っていたけれどやめてしまったとか、出稿するか迷っていたけど出さなかったという企業にはこの機会に出稿していただいて、LINE Ads Platformの価値や届くユーザーの数などを体感していただけたらと思っています。
オンライン・オフライン関係なく接点を作っていく
MZ:変化の激しい運用型広告の世界でLINE Ads Platformが目指すビジョンとは、どういったものでしょうか?
池端:LINE自体のサービスも、広告においても、一人ひとりのユーザーに対してパーソナライズされたコンテンツや情報の提供を促進していきたいと思っています。オンライン・オフライン関係なく、新しい企業、新しいブランドとの接点を作れる場所であり続けたい考えです。アクティブユーザーの多い我々だからこそ得られるユニークでストロングなデータは大量にありますし、今は常にスマホで友人や家族などと連絡を取りながら行動するというのが日常になっているので、店頭などのオフラインの領域でもLINEであれば顧客接点を提供することが可能です。運用型広告においても、パーソナライズされた広告をお届けしていきたいという思いがあります。
その一方で、8,000万人という多くのユーザー規模もLINEの強みですから、マス的な目的の広告も実現が可能になってくると思っています。認知のためのブランディング広告など、デジタルにおけるマス広告の新しい概念も作っていきたいです。
パーソナライズされたコンテンツや情報を届けていく
MZ:トークルームに表示されるスマートチャネルは、広告主からすると魅力的な一方、ユーザーからするとプライベートな空間を侵食されると感じられてしまいかねません。ユーザーと広告主、双方がメリットを得られる形にするために、どのような配慮をされていますか?
池端:そのために必要なのも、間違いなくパーソナライズです。弊社ではLINEをフルファネルで活用できるマーケティングプラットフォームにしていくという構想を描いています。自分の趣向と一見関係ない情報から得られる発見や、生活を豊かにするためのきっかけがあると思っているので、その意味合いでマス的な利用をできる場所もご用意します。しかし、トークルームというユーザーにとってとても大切な場所を広告枠として活用させていただく場合には、その方に最適化された情報を届けないといけないと思っています。たとえば天気やスポーツ速報、緊急性のあるニュースなど、ユーザーの方々にとって必要なコンテンツを届ける場所としても存在意義を感じていただければと。その中に広告というよりもインフォーメーションコンテンツとして、パーソナライズされた最適な情報を提供していけるようにしていきたいです。
北出:LINEには様々なファミリーサービスがあります。トークルームのスマートチャネルに限らず、広告を含めてユーザーにとって一番価値のある情報を提供できるプラットフォームであり続けたいと考えています。
MZ:様々な接点から得られるユーザーデータも活かしながら、より最適化した広告や情報発信をされていくということですね。
池端:LINEをビジネスにご活用いただいている企業の皆様の長期的なメリットを念頭に、我々として正しいと思っている姿に整えたほうがいいと考え、今回のインプレッション定義の変更を行いました。そう思えたのは、ファミリーサービスの成長もあってのことです。実際に広告を運用していただき、今回の変更の成果をクリック率アップやブランドリフトという形で実感していただければ嬉しく思います。