広告運用をAIで自動化 コンサルタントは発想力を要する仕事に専念
――初めに自己紹介をお願いいたします。
山口:アドフレックス・コミュニケーションズの山口と申します。当社は、総合的なマーケティングコミュニケーション戦略の提案・実施を担っており、海外のAIソリューションを積極的に活用した課題解決を行っています。今回ご紹介する「Scibids(サイビッツ)」も、国内で初めて運用を開始しました。私自身は、ソリューションを選定・導入する一連の工程に携わっており、導入前のテストも行っています。
Leroy:私はScibidsでグローバルセールスを担当しています。Scibidsは2016年にパリで創業したスタートアップ企業で、DSP広告の運用を最適化するソリューション「Scibids」を提供しています。
――今回、アドフレックス・コミュニケーションズが「Scibids」を導入した理由をお聞かせください。
山口:よく知られているように、広告運用の現場では工数の増大が課題となっています。日々発生する複雑な課題にスピーディーに対応し、高いクオリティを保ちながら運用を続けていくには、AIを適切に活用していくことが近道です。
Leroy:「Scibids」は“担当者を日々の運用から解き放ち、想像力や発想力を要するタスクに集中できるようにする”ことを目標に開発されました。AI・機械学習技術を活用し、独自のアルゴリズムによって人の運用では実現できない最適化が可能なため、コンサルタントはより上流の業務に専念できます。
山口:AIを活用した広告最適化については、様々なソリューションを調査するとともに、国内のお客様への有効性についても検討を重ね、各ファネルにおいて導入しています。その一つが「Scibids」です。海外製品を取り入れる理由は、やはり国内のものと比べて圧倒的に先進的な技術が活用されているためです。
個別・複数KPIの設計が可能 多次元分析で無駄のない配信も
――「Scibids」は、広告主にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。
Leroy:まず、「Scibids」では個別のKPIを設定し、最適化することが可能です。広告主は事業領域や成長のフェーズに応じて異なる目標をもっていますが、私たちはその策定・実行を支援します。
具体的には、入札価格設定やデータドリブンな予算配分、潜在顧客の発見といった観点や、ビューアビリティを加味したKPIの設定を行うことができます。
山口:複数のKPIを設定し、追跡することが可能なところも魅力です。この機能が、戦略策定の幅を広げてくれるのではないでしょうか。
Leroy:実際に「Scibids」を活用している企業は、潜在顧客の発見とリターゲティングという二つのKPIを一つの戦略に内包した上で、その両方にアプローチしています。一方を実行することが、もう一方の利益につながるという場合は多く、ビジネスに大きなインパクトを与えることができます。ただし、すべてのKPIが同じ方向性であることを精査した上で取り組むことが必要です。
さらに、最先端のAI・機械学習技術を活用してインプレッションの質を判断しており、より無駄のない広告配信を実現できます。一般的な自動入札機能では、デバイスやオーディエンス、配信媒体など単一の要素に関してインプレッションの良し悪しを判断する「一次元分析」が行われており、最適化されている中にも効率の悪い配信が含まれてしまうことがあります。
これに対して、「Scibids」は複数の要素を重ね合わせて分析する「多次元分析」によって、効率的な入札を実現しています。
山口:「Scibids」は、単に「機械学習ができます」というものではなく、より複雑な変数について最適化できる点が強いと思います。Leroyさんは「インプレッションの質を規定する変数は50程度ある」と話していたのですが、それらを緻密なロジックに基づいて分析していることが導入の決め手でした。
別の観点では、レポート作成やキャンペーンの調整といった比較的単純な作業を「Scibids」によって自動化し、当社のコンサルタントはキャンペーン設計やターゲット分析、メディア戦略などに注力するという効率的な作業分担も可能になっています。これによって、広告主が抱える本質的な課題により深く向き合えるようになりました。
日本での導入事例も!4週間でCPAが40.8%改善
――「Scibids」の導入成果について、事例とともにお話しいただけますか。
Leroy:実際に導入いただいた企業に、スペインのホテルブランド「Melia」があります。同社は約370のホテルとリゾートを40ヵ国で展開しています。
同社はメディアの買い付けに関して、良質なトラフィックやWebサイトへの訪問数といった観点を組み合わせた独自の戦略をもっており、「質の高いトラフィックの生成」「ROIを高める」という2つのKGIを掲げていました。
「Scibids」を使い始めて約1年が経過したところで、導入によるリフトを計測してみたところ、ROIは4倍、トラフィック生成数は2倍になっていたことがわかりました。複数の指標を設定できる「Scibids」の強みを活かして、「質の高いトラフィックを生成する」「ROIを高める」という2つの課題を解決できたため、私たちも大きな手ごたえを感じました。
山口:当社においても日本の幅広いお客様へ導入を進めているのですが、想像以上のパフォーマンスを発揮しています。
たとえば、大手健康食品メーカの腸内環境を整えるサプリのマーケティングで、「Scibids」を用いた広告配信を今年1月に開始しました。このケースでは、約4週間の学習期間を経て、40.8%のCPA改善が達成されました。「Scibids」は導入してから比較的早い段階で結果が出るという特徴があるため、お客様にも自信をもってお勧めできます。
海外製品は「導入ハードルはあっても必ず結果がついてくる」
――「Scibids」のような海外発のソリューションを日本へ導入する際には、言語や商習慣の違いといった障壁があると思います。この点については、どのように対応しているのでしょうか。
山口:当社が海外製品を取り入れるのはこれが初めてではなく、これまでにも、AIによってより効果の高い広告クリエイティブを提供する「Creadits」や、リスティング広告の最適化を行う「AdScale」などの導入を進めてきました。そこで培った知見やノウハウが役に立っています。
また、具体的な取り組みとしては、Scibidsのメンバーと当社のコンサルタントは毎週定例のミーティングを開いており、機能の微調整を続けています。
Leroy:これまでアドフレックス・コミュニケーションズと取り組みを進めてきた中でユニークだと感じているのは、社員の教育やクライアント企業への啓蒙のための投資を惜しまない点です。私たちのテクノロジーについて熱心に学んでもらっており、信頼できるパートナーですね。
山口:海外製品の導入は確かにハードルが高いのですが、その圧倒的な技術力や先進性をしっかりと活かすことで、必ず結果がついてきます。運用メンバーを育てることはもちろんですが、国内のお客様が抱える課題に合った適切なソリューションを選定することがまず大切だと考えています。
AI・機械学習の知見を強化し、お客様の一歩先を行く
――最後に、両社の今後の展望についてお聞かせください。
Leroy:当社は既に15ヵ国に事業を展開していますが、今回日本の皆様にも「Scibids」をご利用いただけるようになったことを嬉しく思っています。アドフレックス・コミュニケーションズのお客様にも高い価値をもたらすことができるよう、一層の協業を進めていきます。
また、今年3月には初のインターナショナルオフィスとして、シンガポール支社を設立しました。APAC地域はメディアの観点で急速な成長を見せています。シンガポールを拠点に、この地域への啓蒙活動や最新テクノロジーの導入を加速させていきます。
山口: 当社は、事業計画の策定から、コミュニケーション・プランニング、PDCAマネージメントまでをフルファネルで提供できる体制を構築しています。他にも複数の企業とパートナー提携しており、既にご紹介したAIにより効果の高い広告クリエイティブを提供する「Creadits」や、リスティング広告最適化の「AdScale」も組み合わせて活用できます。今後も課題解決をさらに加速するため、AIや機械学習の知見を強化し、「Scibids」を含めたAIソリューション・サービスを拡大していきます。
この1年間で強く実感しているのは、メディア環境やテクノロジーの発展により、お客様から求められることも、私たちが提供できる価値も大きく変わっているということです。だからこそ、変化の兆候を逃さず、お客様の一歩先を行って、適切なソリューションを提供していきたいと思います。