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織田浩一の近未来マーケティングガイド

第7回 見えてきた、ビデオ配信サービスのビジネスモデル確立の可能性~著作権問題を超えてYouTubeと提携するテレビ局・音楽会社の思惑~


著作権問題によって、表舞台から姿を消したファイル共有サービスのことはまだ記憶に新しい。ビデオ共有サイトYouTubeにとっても、著作権はその基盤に関わる問題であると思われていたが、最近にわかに著作権者である大手の音楽会社やテレビ局が、YouTubeでのコンテンツ配信に乗り出すようになってきた。YouTubeとの提携から生まれる「ビデオアフィリエイト」とも言える新しいビジネスモデルの可能性に、多くのコンテンツホルダーが注目している。

YouTubeは何を変えたのか?

 先日、日本で講演を行っているときに、YouTubeがGoogleに16億5000万ドルで買収されることが決まったと聞いた。講演の中でも、もちろんYouTubeのことに触れ、あるパネルディスカッションではYouTubeのすごさについて聞かれたので、「真の意味で国境を越えた、はじめてのコンテンツ配信ネットワークである」と答えた。Yahoo!MSNGoogleもグローバルなサービスであるが、ある意味それぞれの国のバージョンをユーザーは使っているので、実はかなり国境を残したつくりになっている。それに対してYouTubeでは、アメリカや日本のコンテンツはもちろん、中国の男の子2人によるバカバカしい口パクソングや、韓国人の女の子2人組のパフォーマンス、イスラエルのTV番組を、それこそ続けて見れるようになったのである。これがユーザーの意識に与えるものは大きい。

 もうひとつ、YouTubeのすごさ、というかしたたかさを感じさせることについて話そう。それは、「ビデオアフィリエイト」とも言えるビジネスモデルの確立の可能性についてである。

著作権問題に終止符を打つ「ビデオアフィリエイト」

 YouTubeに対して、放送事業者、映像製作事業者など日本国内の23の著作権関係権利者の団体・事業者が、「YouTube対策強化週間」と称して、ユーザーがアップロードした約3万のテレビ番組、アニメ、音楽ビデオなどを削除するよう要請し、YouTube側はただちに削除したというニュースが流れている。それを知ったとき、なんとなく数年前のアメリカでの様子と同じような印象を受けた。

 アメリカではP2Pファイル共有サービスを提供していた、昔のNapsterKazaaなどが、音楽業界から訴えられたときに法廷で戦う強固な姿勢を見せ、結果的にビジネスとしてうまくいかなくなっていった。だが、そうやってひとつのP2Pネットワークをつぶしても、結局は次にBitTorrentが流行ったりと、ユーザーは場所を変えていくだけだということを、音楽・映画・テレビ業界は学んでいった。

 P2Pビジネスを見てきたYouTubeも、そのように戦うことに意味がないと理解し、著作権者からのクレームに対して素直にビデオを削除し、そしてまた同じユーザーが同じビデオをアップロードするといういたちごっこを続けているのだが、そうしているうちにビデオトラフィックでトップのサイトになってしまい、徐々にメディアとして確立し始めたのだ。そして、テレビ局や映画会社などとプロモーション契約を結ぶことになるのだが、YouTubeのしたたかさはここだけではない。

 実はGoogleに買収される直前、YouTubeはアメリカの4大音楽会社のうちのUniversal Music GroupSony BMG Music EntertainmentWarner Music Groupと提携し、総額5000万ドル相当のYouTubeの株式が音楽会社3社に渡った。これによって、これらの音楽会社の曲がYouTubeユーザーによってビデオで使われる場合、例えば口パクビデオで使われても、ライセンス費用としてそのビデオのページから得られる広告費を、YouTubeと音楽会社で分配することが可能になったのである。YouTubeは、音楽会社のビデオ・音楽コンテンツを代わりに配信して広告費を稼ぐ、アフィリエイターになったのだ。

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この記事の著者

織田 浩一(オリタ コウイチ)

デジタルメディアストラテジーズ社代表、アドイノベーター編集長。 広告・メディアビジネスコンサルタント。米シアトルを拠点とし、欧米の新広告手法・メディアテクノロジー・IT調査・コンサルティングサービス、記事執筆、講演を行っている。最近では有力ブログをネットワークするAgile Media Networkの立ち上げに関与した。監修書に「テレビCM崩壊~マス広告の終焉と動き始めたマーケティング2.0(Joseph...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2006/10/30 11:19 https://markezine.jp/article/detail/310

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