マーケターは“物語の語り手”となる必要がある
ストーリーテリングそのものは新しい考え方ではなく、古くから“物語の作り方”として絵本や昔話、小説、映画などで幅広く用いられてきた手法です。視聴者を最後まで強く惹き付ける必要のある動画マーケティングや、ブログやメールマガジンなどのコンテンツ全般、また“チャットボット”の台詞1つ考える上でも、ストーリーテリングの考え方は効果的だと注目されています。
コンテンツマーケターにとって、“良い物語の語り手”であることは欠かせないスキル・素養の1つとも言えるかもしれません。実際に米国では、新聞や雑誌のジャーナリスト経験者をコンテンツマーケターのポジションに採用するような動きも活発化しています。
ストーリーテリングの基本「Story Spine(物語の構成)」
ストーリーテリングの基本形は「Story Spine」と呼ばれる物語の構成で、「物語の主人公が課題や問題に直面する→それを克服して成長する→ハッピーエンドで終わる」というのが基本的な流れです。

この物語の力をビジネスに応用した代表例の1つが、アップルの創業者スティーブ・ジョブス氏のスピーチです。2005年6月、スタンフォード大学卒業式で行われたジョブス氏の有名なスピーチ「ハングリーであれ。愚か者であれ」は、ストーリーテリングの手法に沿った内容でした。
1.昔々あるところに、幼い頃に養子に出された私(ジョブス氏)がいました。
2.大学まで行かせてもらったものの、人生で何をしたいのかわからず、大学に通う意味を見出せずにいました。
3.ある日のことです、大学を中退し、自宅のガレージでアップルを創業しました。自分が打ち込めることに出会えたのです。
4.だから、30歳の時に経営方針の違いでアップルから追放された後も、NeXTやアニメーション映画会社・ピクサーを立ち上げられたのです。
5.アップルから一度追放されるという挫折を経験し、それでも自分の仕事が心の底から素晴らしい仕事だと思えたからこそ、アップルに戻った後も創造的な仕事ができたのです。
6.そして、ついにアップルは時価総額1兆ドル以上の世界的企業になりました(みなさんも自分が打ち込める仕事を探し続けてください、立ち止まっていてはいけません)。
ジョブス氏がアップル創業から現在までの出来事を時系列で話しただけでは、これほど有名なスピーチにはならなかったでしょう。このスピーチが有名になったのは、内容にストーリー性があったからだと考えられます。