アマゾン「パワポ禁止令」の真相
さて、数年前に「アマゾン、パワーポイント資料を禁止に」という記事を読んだ記憶がある方もいるかと思います。調べてみると、実は、アマゾンCEOのジェフ・ベゾス氏はパワーポイント資料の作成を全面禁止にしたのではなく、社内資料に限りA4サイズ、1枚から4枚で提出するように、社内ルールを定めたとのことでした。
その背景には、箇条書きのプレゼン資料を見ても情報の整理が甘く、逆に資料がわかりにくいということがあったようです。
プレゼン資料を作成する時にほとんど意識していないかもしれませんが、その過程は、主に「情報の構造化」と「デザイン」の2つの工程があります。
アマゾンでは、後者のデザインの工程は社内では無駄なので、省いたと考えられます。皆さんの周りにも、ただなんとなくパワーポイントのほうが説明資料としてよさそうだから、なんとなく箇条書きの内容を詰め込んでいるだけの資料を作っている人はいませんか。
また、当社がプレゼン資料のデザインをキレイにしてほしいと依頼を受ける時、クライアントから受領する資料の多くは、デザインではなく、デザインの前段階の課題に直面しているケースがほとんどです。それらの多くが資料作成において最も重要な“情報の構造化”の工程が抜けてしまっているのです。
プレゼン資料における「情報の構造化」の本質
そもそもの資料に含まれているコンテンツはさておき、表現手法としてのプレゼン資料で、失敗している資料にはある共通の特徴があります。戦略コンサルなどの非常にロジカルシンキングの世界では、情報をMECE(重複なく・漏れなく)にすることが重要とされています。プレゼン資料というのは、デザインのプロセス以外に、この緻密な情報処理の作業プロセスの集合体でもあります。
まず、俯瞰的視点で、プレゼン資料の構成(各章の章立てやコンテンツページの構成)に漏れがないかを見ます。次に、ミクロな視点では、各個別ページにおいて「タイトル文」「サブタイトル」「項目」「本文」「引用などの補足説明」などを重要度に合わせて、より重要性の高い情報を上位に配置し、フォントサイズで情報の重みづけの濃淡をつけたり、ポイントについてはデザインやカラーで強調したりする必要があります。
情報のメッシュ(細かさ)が記載する情報がバラバラなケース、構成されるべき情報の項目が漏れているケースなど様々なパターンがありますが、深掘りして調べていくと、その大半の要因が(1)情報を制御せずにすべての情報を資料に盛り込もうとしていること、(2)過去の参考資料をベースに継ぎ接ぎして焼き直した資料を作成したこと、この2点に起因しています。
すべての情報を資料に盛り込もうとする背景には、第1回の記事でも指摘したように、「担当役員が細かく情報を記載しろというので、どうしても情報量が多くてわかりにくい資料になる」と、担当者が諦めてしまっている状況があります。
が、よくよく聞いてみると、実は担当者が「プレゼン資料に落とし込む内容」と「プレゼン相手に理解させておくべき情報」を、混同してしまっているのです。ここに伝えたいことを、プレゼン資料にすべて書き込まなければいけないと思い込んでしまう主たる原因があります。
当社のKUROKOメソッドにおける資料作成の鉄則は、「手元のメモ帳、PCの場合はWordなどの文書作成ソフトを開く」ことです。いきなりPowerPoint/Keynoteを開いて資料を作り始める前に、一度Wordなどを使って情報を精緻に整理していきます。