働き方改革に望むのは「1日の労働時間」の削減
仕事とそれ以外の時間配分は、ビジネスパーソンにとって大きな問題だ。彼らは「仕事・働き方」に対して、どのような改革・改善を期待しているのだろうか。
調査では18個の要素を挙げ、その重要性(魅力度)を答えてもらった。この種の意識データを国間で精緻に比較しようとすると、スコアの妥当性の問題が生じる。たとえば複数回答の質問であればチェック個数の多寡、スケールの質問であれば両端を選びやすいか中間を選びやすいかなど、国や地域によって回答傾向そのものの違いがある場合がある。ここではそれらを低減するために「MaxDiff法」を用いた※3。MaxDiff得点の高低が、重要度(魅力度)の高低を示している(図表2)。

3ヵ国とも改善要望が高かったのは(1)〜(3)「労働時間」であるが、日本と韓国はドイツと比べて(2)(3)「休日・休暇」への要望が多い傾向にある。他には(14)「多様な働き方」への得点が高い。時間以外では(10)「成果と評価・査定」に関する改善要望が3ヵ国とも比較的高い。中位以下を見ると、日本では(12)「評価・査定基準の明確化」、韓国では(8)「自分の職務範囲がより明確に」(5)「自分の裁量の拡大」、ドイツでは(4)「教育・研修」(9)「自分の職務範囲を超えた挑戦」がそれぞれ高く、国ごとの特徴も見られた。
働き方改革で「創出された時間」をどう使うか
では、時間を生み出すために、ビジネスパーソンは現状どのような行動・消費を行っているのだろうか(図表3)。

また、もし労働時間が減り、時間が創出されたとすると、その時間をどのように使いたいと考えているのだろうか(図表4)。

日本は他の2ヵ国よりもプライベート時間が短い。また、時間の節約行動やツール・サービスの利活用も活発ではない。プライベート時間が増えた際に行いたいことでは、他の2ヵ国と比べて「睡眠」という回答が多く、まずは休みたいというニーズが高いことがわかった。
一方で「睡眠」以外には、家族や友人・恋人と過ごす、スポーツ、家の内外での娯楽、スキルアップなど、様々なジャンルの活動や消費ニーズがあることがわかる。具体的には、旅行の他、コンサート・観劇、テーマパーク・レジャー施設などの娯楽、フィットネスやアウトドアなどのスポーツ系などの回答が多い。また、日本では現状、あまり活発ではないとされている「副業」「資産運用・投資」などにも関心が高い点が注目される。
さらに、「ワーク」と「ライフ」の関係でより詳細に見ていく(図表5)。

「1日の労働時間削減」を強く望む人は、生活の基本とも言える睡眠や買い物などを充実させたいというニーズが高い。「休日・休暇を長く」望む人は旅行などのニーズとの関係性が強い。ビジネスの「成果と報酬・評価」に重点を置く人は、副業への関心も高い。「多様な勤務形態」の拡大を望む人は、家事、スポーツ、学習・資格取得、趣味の習い事などの充実ニーズと関連している。オンオフの切り替えは言うまでもなく大事だが、このようにより一段フェーズを上げて両者の関連を見ると、その人のライフスタイル全般の志向や嗜好も見えてくる。その調和(相互補完)に資するようなサービス・システム等の提供も大事であろう。
しかし、先述のようにツールやサービス等の使用に消極的な現状を踏まえると、これらのニーズを潜在的なものに終わらせず、具体的な形に結びつけてハードルを下げていく仕組み作りに、今後のビジネス課題とチャンスがあるとも言えるだろう。
自己投資意向が高い韓国、生活ベネフィットを重視するドイツ
一方、韓国は旅行やレジャー・スポーツなどのニーズが高いが、「勉強・スキルアップ」や「学習・資格取得」など自己投資への意向も高い。競争の厳しさの裏返しとも言えるかもしれないが、創出された時間に対して、より多面的に生活を充実させたいという志向性・ニーズも高いと考えられる。
ドイツは日本・韓国同様に労働時間に関するMaxDiff得点の項目が高いが、日本や韓国に比べて仕事のある日でも他の生活行動に一定の時間が取れていると感じる割合が高い。そのため、劇的な変化というよりは、ライフスタイルでは人付き合い、サービスでは動画・音楽配信や多チャンネルテレビ等のメディア視聴など、自分なりの生活や興味関心をより充実・洗練させるベネフィットを感じられる製品やサービスがさらに評価されていくのではないだろうか。
※3 MaxDiff法(Maximum Difference Scaling)は項目間の差異を最大にする測定方法。測定したい全項目の中からいくつかの項目を抽出して回答者に提示し、その中で「最も魅力的(重要)なもの」と「最も魅力的(重要)ではないもの」をそれぞれ選択してもらう。これを一定回数繰り返し行い、項目ごとの評価得点を推計する(今回の調査では、1回に5項目が無作為に組み合わされた画面を提示し、それを1回答者あたり12回繰り返して測定)。
■調査概要
調査主体:マクロミル・翔泳社(共同調査)
調査方法:インターネット調査
調査対象:日本、韓国、ドイツに在住の25~44歳の男女で、企業で正規雇用されている方(マクロミルモニタ会員および提携モニタ)
割付方法:各国200人を性別×年代(25~34歳・35~44歳)で均等割付/合計600人
調査時期:2019年4月
▼調査レポート
『働き方改革によってプライベート時間が増えたら?日韓独のビジネスパーソンに調査』(HoNote)