ブランドとの過去・未来の接点を構築する
AR/VRはひとくくりで語られがちですが、それぞれ特性は異なります。どちらかというとVRは個人の体験に閉じていますが、ARは現実世界に情報や演出を付加させながら、他人との体験共有が可能なので、リアルな体験創造に向いていると思っています。ポケモンGOの登場は、ARが浸透する大きなきっかけになりましたが、そこにも「体験を共有する」という特性が表れています。
2018年1~2月に開催した回顧展「FINAL FANTASY 30th ANNIVERSARY EXHIBITION -別れの物語展-」では、来場者に音声ARシステムを組み込んだアプリが利用できるスマートフォンとヘッドホンを配布し、展示物や来場者属性と連動する様々な音声を楽しめる演出を行いました。人の体験の記憶は、音と結びつきやすいことから、音声ARで顧客と作品の接点を想起させ、作品愛を強くするストーリーを設計しました。これは顧客とブランドとの歴史があるからこそ、実現できた事例です。
一方で、部屋の中にイケアの実寸大の家具を設置できるアプリ「IKEA Place」は、顧客との未来の接点を作っています。そのブランドの商品やサービスによってユーザーの生活がどう変わるのか、ARを活用することでブランドが寄り添う未来の姿を、より具体的に顧客に提示することができます。
今やネットはインフラとなり、だれもが意識せずにネットを使う時代になりました。AR/VRもゆくゆくは、その言葉自体がなくなり、自然に私たちの生活に溶け込む時代がくるのではないでしょうか。

株式会社電通ライブ
クリエーティブユニット 第1クリエーティブルーム
チーフ・プランナー 尾崎 賢司氏
2010年電通入社。2017年電通ライブ出向。入社以来、イベント&スペース領域の企画・制作を担当。Webやアプリの制作、キャンペーン設計の経験を経て、現在は事業開発やサービス開発など担当領域を広げて活動中。
ユーザー同士で「体験」を共有する
体験型イベントを手掛ける私たちのチームではAR/VRありきではなく、「AR/VRを取り入れることで、ユーザーの体験価値は上がるのか?」を思考の軸に置いています。
最近では、アニメや映画など、自社・他社の既存IPやコンテンツのより濃い体験を味わえるデジタル回遊型コンテンツを開発すべく、デジタルクリエイティブで有名なAID-DCCと提携し、共同チーム「AID新社」を立ち上げました。
提携に先駆け、動物園でのAR体験ができる回遊型コンテンツ『けものフレンズ2東武ジャパリパーク』を手掛け、動物園での遊び方や学び方をアップデートすることができました。ユーザー同士がゴール後に各自の体験を振り返り、盛り上がっている姿が目に焼き付いています。
東北新社とAID-DCCで開発するコンテンツにおいて、両者が共通している思いは、これまで多くの人に愛されてきた文化やレジャーに目を向けてアップデートしていくことです。美術館・博物館、旅行、映画、お祭り、散歩など、あらゆる領域に応用できます。
またグループ会社のオムニバス・ジャパンと共同開発した、スマホアプリを使わずにARスタンプラリーが体験できる「アプリレスARスタンプラリー」も、鉄道や商業施設、観光地などで活用することで、新たな体験を生活者に提供できます。
AR/VRを使ったコンテンツの特徴は、一人でも複数でも、実際に鑑賞した映像をみんなで「体験共有」することで、もう一度盛り上がれることです。2019年はリアルな場での新しい映像体験の提供にも挑戦していきます。

株式会社東北新社
プロモーション制作事業部/デジタルビジネス企画開発部
AID新社 プロデューサー 小林 弘明氏
プロモーション領域のプランニングとプロデュースが専門。自社・他社IPを活用した広告プロモーション、興行イベント、SOCIAL GOOD施策も企画、実施(2016-2017年Shaun in SHIBUYAなど)。2018年より、動画制作、デジタル体験型イベント、R&Dを推進するデジタルビジネス企画開発部を担当。