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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

マーケターの実践に学ぶ、成果につながる組織戦略

「全社を挙げたデータ活用で優位性を」エバラの勝ち残り戦略とそれを支えるマーケ組織

営業部門のデータ活用が最重要、その理由は?

  全社横断でのデータ活用に関して、毛利氏は特に営業部門のスキル強化を重視している。その背景には、商品が顧客に届くまでに問屋や食品卸、コンビニやスーパーといった様々なステークホルダーを介するというBtoBtoC企業の業界構造がある。

 ステークホルダーそれぞれに事情がある中でエバラの商品を選んでもらうためには、良い商品を出すことはもちろん、関係者のニーズを把握し、説得力のある営業をすることが大切になる。その過程において、データが強い武器になるというわけだ。

 日々ステークホルダーと接しているのは、現場の営業パーソンだ。わずか20~30分間の商談で、その先2~3ヵ月間の売り上げが決まってしまうこともある。

 「たとえば卸店様から『こういうデータはありませんか?』とご要望をいただいたときに迅速に対応できると、信頼を得られますよね。その信頼の積み重ねが、売り上げにつながるのではないかと思っています。

 他社と似たようなデータを使っていても、分析の視点やわかりやすさ、説得力の面で差をつけることはできるはずです。他社の営業パーソンに負けないようにするためのスキルを、マーケティング部門から営業部門に提供していきたいと考えています」(毛利氏)

全職種向けにマーケ&データの基礎講座を実施

社内マーケティングセミナーの様子(提供:エバラ食品工業)
社内マーケティングセミナーの様子(提供:エバラ食品工業)

 他部門へのスキル提供の取り組みの代表例が、毛利氏がカリキュラムの作成と講師を務める社内マーケティングセミナーだ。全国各地から職種にこだわらず若手層を集め、月に1回、1日4時間、マーケティングやデータに関する講義を実施。去年は50人、今年は30人が参加している。

 毛利氏がそこで教えるのはフレームワークや専門知識ではなく、「戦略的思考」「マーケティング的思考」だという。

 「たとえば、売り上げを102%に、という目標が与えられたとき、その数字を達成するためには何人に買ってもらえば良いのか、見当をつけられることが大切です。テレビCMが必要な規模かもしれないし、試食販売だけで達成できる規模かもしれない。『限られたリソースを配分するために、その実態を正しく掴む』というスキルを身につけてもらいます」(毛利氏)

 受講者たちは他にも、エバラの商品を例に、顧客のインサイトや商品の強み・ベネフィットについて学び、さらに統計・データに関する基礎知識の習得や、エクセルの分析機能を用いた演習にも取り組むという。

「一番効くのはFace to Face」全国各地で講習会も

 さらに毛利氏は年2回、全国各地の支店に足を運び、様々な部署の社員たちを対象にTableau(タブロー)などを用いたデータ分析の講習会を実施している。多くのマーケターが抱える営業部門との連携に関する問題について、毛利氏は「マーケティング側から営業の現場に飛び込んでいくことが大切」と述べる。

 「私が講習会でやっているのは、たとえば現地のデータを使って『こんなことができるんですよ』と具体的に示すことや、BIツールやエクセルの分析機能を使うことで、バイヤーへの提案書がどのように変わるのかを見せていくことです。

 『なんだよ今さらデータ分析なんて』という反応があってもいい。『いやいや、けっこうこれが、いいんですよ』と、その場で実践してみると、『これはいいね』『すぐ企画書に貼れたりするの?』『ちょっと触ってみようかな』という声が返ってくるようになります」(毛利氏)

 毛利氏は、「デジタルっぽくないのですが」と前置きしながらも、「一番効くのはFace to Faceでやっていくことです」と強調する。確かにレクチャー動画などを用意すれば、学習の効率は向上するかもしれない。しかし片道2時間かけてクライアントのところに通っている営業部門の社員が、それを見て勉強する時間を確保するのは厳しい。マーケティング部門側が時間を確保して、現場のデータを使って見せることで、社員たちの姿勢も変化していくという

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営業社員が相関マトリクスを作成 現場に浸透するPDCA

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この記事の著者

蓼沼 阿由子(編集部)(タデヌマ アユコ)

東北大学卒業後、テレビ局の報道部にてニュース番組の取材・制作に従事。その後MarkeZine編集部にてWeb・定期誌の記事制作、イベント・講座の企画等を担当。Voicy「耳から学ぶマーケティング」プロジェクト担当。修士(学術)。東京大学大学院学際情報学府修士課程在学中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/07/30 07:00 https://markezine.jp/article/detail/31485

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