バズワードの裏側を探る視点/エンジニアとの連携が一層重要に
――ステップアップのためには、スキルや環境を整理していきながら、自分の目指すキャリア像と照らし合せていくことが大切なのですね。他に気をつけた方が良いことはありますか。
於保:自分の実力と目指している方向によって転職を決められればいいのですが、求められている人材条件に自分がマッチしているかという問題も出てきます。新しい領域で挑戦したい場合は、まず比較的中小規模の企業に入ってからキャリアアップしていくという進め方もあります。
どんなところでも、仕事の質を高め、自分の知見を広げていくことはできると思いますので、環境を活かしつつも翻弄され過ぎないようにすることが重要です。
私のキャリアは、その時々のバズワードを追いかけてきたようにも見えるのですが、「バズ」はマーケティングの本質に応えるべく、テクノロジーが進化している過程だと考えてきました。そのため個々の技術を理解することはもちろんですが、「今、なぜそれがバズっているのか」という背景や課題感を見極めるようにしてきたつもりです。
マーケティングの現場から「高価なツールを入れたものの、使いこなせていない」という声をしばしば聞きますが、本質を理解しないまま運用してしまっているケースもあるのではないでしょうか。一人のマーケターとしては、最初はそこからのスタートでもいいのですが、レベルアップを意識するのであればバズワードの裏側を探る視点は重要です。本質的にはマーケターとは、市場の顧客の課題を解決することを目指すべきです。
――様々な業務を経験されてきた於保さんから見て、デジタルマーケターに求められる役割やスキルに変化はありますか。
於保:近年では、エンジニアの方々と連携しながら業務を進めていく場面が増えていますので、テクノロジーに関する知見を増やしておくことが重要なポイントだと思います。
特に、マーケティングテクノロジーを活かすための専門家の需要が増しています。顧客に対して大雑把な性別・年齢という括りで対応するだけではなく、行動の特徴から趣味・嗜好性、その時の状況を見極めた上で、適切な体験を提供する必要があるからです。データを整備、可視化、解釈、配信するための技能をもつ人や、SQLやPythonなどの言語、統計や機械学習の知識などが求められるようになってきています。
「エンジニアとマーケターは相いれない」とよく言われていますが、それは両者の間に他のステークホルダーがいて、その人たちを介していかないと辿り着かなくなっているから。エンジニア側にはUI・UXのデザイン設計がいて、プロジェクトマネージャーのような指揮官がいて、ビジネス側にマーケティング寄りの人がいて、さらに経営層もいて……と、両者の距離が遠くなっている。ここをつなぎ、会話ができるような役割をマーケターが担えると良いと思っています。
たとえば、データをマーケティングに使いたいのであればSQLを触ってみるとか、エンジニアはどういう道具を使っているのか、環境整備すべきものが何かを把握しておいたり、コミュニケーションはマーケター側から取ってあげたり。そうした働きも必要ですね。