3つの事業を軸にビジネスを展開
1958年創業のAOKIホールディングス。同社は「ファッション」「ブライダル」「エンターテイメント」という3つの事業を軸に、ビジネスを展開している。
ファッション事業を牽引するAOKIブランドでは、レディースを含めたトータルスタイリングストアへと進化を果たすことで、変化の激しいビジネススーツ業界内で確かな地位を確立。2004年には顧客の好みやライフスタイルに応じた着こなしを提案する「スタイリスト制度」を導入するなど、サービスを発展させていくことで成長を続けている。そして、グループ企業であるヴァリック、アニヴェルセルがエンターテイメント事業とブライダル事業をそれぞれ展開している形だ。
そんなAOKIホールディングスは、2018年、新しいグループ統合ビジネスの展開を目指し、セールスフォース・ドットコム(以下、セールスフォース)が提供するMA「Salesforce Marketing Cloud」(以下、Marketing Cloud)の本格運用を開始した。グループ全体のデジタル施策やCRM施策を支援する、同社デジタル・CRM推進室の吉田亮氏は、当時のことを次のように振り返る。
「導入のきっかけは、3年前の2016年。オーナーが発した『グループ全体で保有する3,200万人の会員情報を、もっと有効活用できないだろうか?』という一言から始まりました。この背景には、市場規模の縮小、また新規顧客の獲得だけを目指すことへの課題意識がありました」(吉田氏)
3,200万人の会員情報を統合しCRMを強化
AOKIホールディングスが事業を展開するビジネススーツ市場やウェディング市場は、人口減少やビジネス・ライフスタイルの変化にともない、年々縮小が続いていた。たとえばビジネススーツ市場でいえば、20年前と比べると市場規模は半分以下。進学をきっかけに単年齢で最もスーツが売れる18歳人口も、20年前と比べて3割減っている状況だ。またウェディング事業についても、晩婚化やシンプル挙式へのニーズが高まり、大きな式場で式を挙げるカップル数は減少傾向にある。
市場の縮小に加え、同社は従来のマーケティング手法にも限界を感じていた。テレビCMなどマスマーケティングの影響度が落ちてきているという肌感覚があり、ビジネススーツブランド「AOKI」の販促部門が郵送しているDMについても、「5年前と比較すると、コンバージョン率が2割くらい落ちていました」と吉田氏は説明する。
「以上のような状況から、これからは新規顧客を増やしていくだけではなく、CRMを強化することで既存顧客との関係性を構築し、リピート率をアップしていく必要があると強く感じていました」(吉田氏)
吉田氏は新規顧客の獲得に加え、3,200万人との関係性を構築していくことで、リピート率を高めていくことが重要であると考えた。そして、最終的にはグループ間で相互送客を生み出すことで、LTV・利益拡大が実現できると確信したのだ。そして、同氏が施策実行のために選んだのがMarketing Cloudだった。