社内で分析したデータを、そのまま施策に使えることの価値
MonotaROではKARTE導入に先立ち、様々なWeb接客ツールを試してきた。だが、どのツールも社内のマーケティング用データ基盤が思うように連携できない。
「ほとんどのツールはWeb行動データと連携することだけを想定していて、Google BigQueryに格納した膨大で多様なデータを連携するのは極めて困難でした。大量のデータを定期的にアップロードするとか、HTTPリクエストをECサイト側で発生させるとか、事前の開発負担が重すぎました」と久保氏。施策のたびにデータを送り込むための開発を行うのは非現実的なうえに、リアルタイムでデータが連携できないことはあまりにも痛い。「効果から考えると見合わなかったのです」と振り返る。
MonotaROが技術力を結集させて構築した、大規模かつ整備されたデータ分析基盤とシームレスにつながり、分析データを活用できる点が、KARTE採用の決め手になった。
「KARTE Datahubによって、Google BigQueryに格納された我々のリアルタイムなデータに対してクエリを実行してセグメントを生成し、KARTE ActionでWeb接客を行えます。このシステム構成なら、パーソナライズ化されたよりよいCXを、今まで以上のスピードでお客様に届けることが可能になると考えました。汎用性と自由度が高いプラットフォームのおかげで、セグメントもクリエイティブも柔軟にできることは素晴らしいですね」と久保氏は笑顔を浮かべる。
モノタロウのデータドリブン文化をKARTEがドライブする
導入によって改善されたことの一つに、顧客ごとに伝えるべきメッセージを、適切なタイミングで通知できるようになったことが挙げられる。たとえば同社では1回の注文金額が一定以上のお客様には、同月のご注文の送料が無料になるといった、お得なサービスやキャンペーンを多数用意している。だが、顧客はサービス内容を隅々まで把握してはいないもの。
「適切なタイミングで『あなたはこのサービスの対象ですよ』と丁寧にお伝えすることで、確実に成果が出てきました」と語るのは、データマーケティング部門Web改善チームの米島和広氏だ。
「当社は今までもデータを分析して得た知見をもとにサービス改善をしてきましたが、KARTEによって、サイト上でよりダイレクトに改善案を試せるようになりました。GCPでサービスを動かしている当社にとってKARTEは、別システムを使っている感覚がないくらいシームレスなんです。当社が昔から大切にしてきたデータをもとにCXをよくしていくという基本動作を加速できる点でも理想的ですね」(米島氏)
テンプレートのおかげで施策を気軽に実行できるように
顧客の動線やコンバージョン改善においても、施策をカジュアルに試せるようになった。これまでもキャンペーンやA/Bテストなどの施策を熱心に行ってきたMonotaROでは、マーケターが施策を実施するにあたってはデータ分析を入念に行い、仕様書を書いて関係各所のOKを得たうえで開発依頼していた。テストで改善案が成果につながらなかった場合の代替案も必要で、マーケターとしては気軽に取り組めるようなものではなかった。
「自ずと実施できるテストの数も限られてきます。試してみたいアイデアはいろいろと出てくるのですが、限られたリソースの中で試して負けてしまうと結構な痛手になるものです」と胸中を打ち明けるのは、Web改善チームの岡崎真理子氏だ。「A/Bテストには絶対に勝たなくてはいけない気持ち」で臨んでいたという。
だが、KARTE導入後は多くの施策やA/Bテストがテンプレートで実現できるため、開発が不要となり、マーケターの裁量でごく気軽に試せるようになったのだという。社内でも開発依頼はできるが、他案件との優先度調整等が必要となり、リリースまでのリードタイムが長くなる。開発しなくて済むのであれば、もちろんその方が断然速い。テストできる回数は急増した。
失敗も怖くなくなったという。テストした結果、あるセグメントでは失敗したとしても、成功したセグメントが他に見つかることがしばしばだからだ。「この属性のユーザーセグメントに対しては効果がある施策なんだな、とわかれば次回につなげられる。勝ち負けというよりは、勝った部分を卒業させていくイメージです。どこかのユーザーセグメントで必ず勝てるので、気分も前向きになりますよね」(岡崎氏)
マーケターが扱いやすいように整備されたデータ分析基盤、そしてデータ分析のスキルを持ち、仮説を打ち立てられるメンバー。だからこそ、KARTEの導入によって、PDCAの質と量を飛躍的に高めることができた、と米島氏は熱を込める。