アバターによる「バーチャル試着」を導入、その狙いとは?
原嶋:スーツカンパニーさんは、店舗へのデジタルテクノロジーの導入を積極的に行われている印象があります。2016年に、アバターに代わりに試着してもらう「バーチャル試着」システムを導入されていて、先進的な取り組みだなと。
細山:好みや体型に合うスーツを選ぶためには、ある程度の試着が必要になります。ただ、シャツやスーツを何十着も試着するのは大変ですよね。そこで、自身に近い体型のアバターを設定し、バーチャル空間で瞬時に試着できるようになればいいのではないかと考え、開発しました。
店頭に在庫がないスーツの着用感や、オーダースーツの完成イメージも確認できるので、様々な場面で活用できています。また試着時のデータも蓄積されてきているので、より良い顧客体験を提供するためにどのように活用するか、様々な切り口で検討しています。

原嶋:店舗内の顧客行動データも取得されているのでしょうか?
細山:一度、店外から店内への入店数を計測したことがあります。店舗前の交通量に対する入店率や、どこの入り口から何人入店したのかというデータを取ったのですが、当時は活かしきることができませんでした。とりあえずデータは取得できたものの、そのデータをどう分析し、どのような戦略に活かせばいいかが見えてこなかったんです。
データ取得の目的を見誤っていたんですね。店舗改善ではなく、店舗を設計する前の材料として活用するべきだったと思います。おそらく、出店前の調査や店舗をフルリニューアルする前であれば、活かせただろうなと。その後は、データを取得する施策に関しては綿密に設計するようにしています。
在庫にとらわれない次世代型店舗の特性を活かし、売上増加に寄与
原嶋:店頭でサイズを確認し、ネットで購入するという、オフライン・オンラインが融合した次世代型店舗「デジタル・ラボ(以下、デジラボ)」もおもしろい試みだと思います。デジラボ自体はいつ頃スタートしたのでしょうか。

細山:2016年からスタートしていて、今は姉妹ブランドのユニバーサルランゲージと合わせて6店舗展開しており、この秋には14店舗に拡大予定です。
以前、ららテラス武蔵小杉店で、通常のスーツを一気に7割程度まで減らし、代わりにセットアップの割合を増やしてみたんです。きっちりしたスーツよりも、カジュアルに楽しめるセットアップのニーズの高まりに対応するための取り組みだったんですが、結果、既存スーツの売上は維持されたまま、セットアップの売上も増加しました。スーツの売上が維持できたのは、店頭在庫に依存する必要のない業態だからこそ実現できたことだと思います。