リソース不足で分析に手が回らない
データの専門企業でないかぎり、分析専任の人材をチームに確保できることは稀です。分析の前段階も後段階も、データにまつわる仕事は少人数で何でもこなさないといけないという企業は多いのではないでしょうか。実際、TXCOMも同様の状況で、リソースの問題で分析までなかなか手が回らず、せっかく構築したCDPがうまく活用できない時期がありました。
そこでTXCOMは、リアルタイムかつ直観的に判断するためにデータを可視化し、意思決定の精度と速度を上げるために、BIツールを活用しました。既にCDP内に利活用が可能な状態で視聴データがたまっていたため、Tableauを活用してマーケティングダッシュボードを構築したのです。

「データの整備・可視化・分析」という施策の前の準備をパートナー企業に任せ、「可視化されたデータの検証/視聴者へのエンゲージメント施策」はテレビ東京側で担うといったように、仕事の役割を分担し、目的のためにリソースを集中できる体制を取りました。

(右)株式会社テレビ東京コミュニケーションズ シニアマネージャー 岸義治氏
TXCOMのマーケティングディレクターである今田智仁氏と同社のシニアマネージャーである岸義治氏は、「外部のパートナーには、CDPの構築後もデータ活用の側面でチームの一員としてプロジェクトに加わってもらった。データ活用の範囲は本当に多岐にわたるので、当事者だけではできないことを伴走してもらうためにも、外部パートナーとの協力体制の構築は必須だと思う」と語ります。
データで視聴者の解像度が上がると、KPI設計の精度も向上する
では、データ統合からBIツールによる視聴者の可視化は、どのようなデータマーケティングにつながっていったのでしょうか。
ここでも有効だったのは、視聴者のインサイト分析です。具体的には、日ごと、番組ごとの視聴者数、流入経路別の視聴傾向を直感的に把握できる20種類ほどのダッシュボードを構築。それまで十分に把握できていなかった視聴者の動向を可視化できたことで解像度が上がり、達成すべきKPIをチームで共通認識として設定できるようになったといいます。
視聴者データによる解像度の向上は、KPI設計の精度向上とともに、マーケティング施策にもポジティブな影響がありました。
たとえば、これまでのテレビ東京におけるマーケティング施策の多くは、新規視聴者の獲得を目的に行っていました。しかしながら、今回の視聴者分析を進めていくことで、番組動画の視聴を目的とした場合、新規インストールのユーザー獲得効率を目指すことよりも既存のファン層の活性化に注力したほうが効率的なマーケティングになるという気づきを得ることができました。
同様に、新規のユーザー獲得においてもチャネルごとのユーザー継続率を可視化したことで、テレビ東京にとってLTVの高いユーザーの特徴を洗い出し、デジタル広告の予算配分や運用リソースを目的別に最適化することが可能になりました。